構成

構成についての情報

このページは 2007年 09月 16日 16時49分16秒に巡回更新されました。
 死体恐怖症

【 80】 構成的グループエンカウンター

死体恐怖症に関する無料情報を入手してみる!→

[引用サイト]  http://www.toshobunka.co.jp/sge

学校ぐるみでエンカウンターを取り入れている宮前小学校が公開授業とシンポジウムを行います。授業にも取り入れているところが特徴です。
エンカウンターを生かした実践を見せていただける学校や先生,研修会がありましたら,情報をお寄せください。こちらで紹介させていただきます。
「いま見ることができるエンカウンター実践」を紹介するコーナーを新しく作りたいと考えています。
格差社会が指摘され,キャリア教育の重要性が高まっています。
6回目になるこのワークショップは,参加者自身のキャリア形成を振り返ります。先生ならば,最大の教育資源である教師自身のキャリア発達を再確認できることでしょう。また,先生以外の若い人なら,自分自身のキャリア発見に役立つことでしょう。体験者の声を見る。
リーダーは藤川章先生で,書籍『エンカウンターで学級が変わる』を10年前に作ったときから,中心的な編者です。
○通常学級の授業でできる特別支援教育のユニバーサルデザインづくり
9月22日(土)に,藤沢市で,神奈川県教育カウンセラー協会の第2回例会が行われます。
第1回目はエンカウンターでした。今回は話題になっている特別支援教育を取り上げます。エンカウンターの精神を生かして,継続的に企画をしている会です。気軽に顔を出されると新たな実践の広がりがあると思います。
通常教室で、ニーズのある児童生徒をどう支援するか。その工夫が対象児童・生徒だけでなく、実はクラスの子どもたちみんなにも役に立ち、効果があがる。そうしたユニバーサルデザインづくりをどうするかについてです。どうかお誘い合わせの上多くの方にお集まりいただきたく、お待ちしています。(K)
エンカウンターを実施する立場としての力量を身につける体験コースです。すでに宿泊を伴うコースを体験した人向けです。日程が以前にご案内したものより前倒しになっていますので,ご留意ください。
エンカウンターを学校で活用するときは,やはり先生にカウンセリングの経験が望まれます。カウンセリングの局面ごとに,エンカウンターでおなじみの片野智治先生が指導をします。なお講座の展開の仕方もエンカウンターで行うシェアリングがベースになっています。主催は埼玉県教育カウンセラー協会。
エンカウンターは学校では,特活でおもに行われています。文科省の杉田教科調査官を中心に,熱心に,大胆に,特活を研究しようという会が誕生しました。本HP管理者も会に参加しましたが,これからの特活をリードしようという熱気と実践にあふれています。エンカウンター等の技法を積極的に生かそうという考え方のようです。同会では,特活に真摯に取り組んでいる先生方の入会を呼びかけているところです。 希望の会HPへ
首都圏で貴重な,Q-Uを使った学級経営学習会です。エンカウンターを生かした学級づくりの具体策がわかります。詳細
構成的グループエンカウンターの熟練したリーダーが,非構成法のよさを取り入れて,先生方の困りごとを話し合う会をもっています。詳細
話題の番組「プロフェッショナル」(NHK)が,中学3年生を担任している鹿嶋先生に密着しました。受験と卒業に向かう中学生を受け止め,自己開示で導く鹿嶋先生の様子,そしてしっかりと成長して巣立っていく生徒たちの様子が収録されたそうです。どのような仕上げで45分番組となるのか楽しみです。
エンカウンターを教育実践に生かした記録として,何よりもエンカウンターを日常的なかかわりすべてに生かしている実践として要チェックです。
見ました。生徒さんの様子に心がふるえました。鹿嶋先生の一言一言に,子どもを導く「教師」の専門性を感じました。茂木さんが言うとおり,エンカウンターは相互扶助を進めながら,ともに成長していくことを提供していると思います。なにより,しっかりと教育が成果を発揮している学校や先生,子どもたちがいるということが広く伝わることが,番組になった成果だと思います。関係者の方に感謝です。4/4
さきごろ日本で初の構成的グループエンカウンターを学術的に研究した本が刊行されました。
なんと構成的グループエンカウンターをテーマとして著者・片野智治先生が「博士」を取得した論文が元になっています。
構成的グループエンカウンターの骨子である「ふれあい」について,その機能と育て方,そして尺度が研究されています。
本音のふれあいがあるところに成長がある,という構成的グループエンカウンターの真髄が,研究的に検討されています。
構成的グループエンカウンターを研究しようという方には心強い1冊です。
文科省がキャリア教育の地域指定を行ってから,この4月で最終の3年目となります。小学校からのキャリア教育が,今度の指導要領改訂でも大切なテーマとなります。
本音の交流で自尊感情を高め,自分に問う力を育てるSGEは,キャリア教育のベースを育て,エクササイズによっては,直接的に職業観や進路意識を高めることができます。
5回目になるこのワークショップは,参加者自身のキャリア形成を振り返ります。先生ならば,最大の教育資源である教師自身のキャリア発達を再確認できることでしょう。また,先生以外の若い人なら,自分自身のキャリア発見に役立つことでしょう。体験者の声を見る。
育てるカウンセリングのページに面接の実践報告を連載しています。学校に行けなかった中三生が,校長先生の励ましを受けてクラスメートとともに迎えられる卒業式までの最後のがんばりをご覧ください。最終回はこちら
エンカウンターのビデオ『構成的グループエンカウンター 実践技法全8巻』のカタログがダウンロードできるようになりました。こちらへ。
構成的グループエンカウンターに関する最新情報を紹介するメルマガ「E-net2000エクスプレス」を2005年1月に創刊しました。
研修会情報や新刊情報,実践情報など最新のニュースをお届けします。
編集は構成的グループエンカウンターの公式ネットワークE-net2000の事務局。E-net2000のメンバーの方はもちろん,エンカウンターに興味のある方の購読をお待ちしています。バックナンバーも読めます。メルマガのページへ
國分康孝先生・國分久子先生総監修による『構成的グループエンカウンター事典』が11月に完成しました(A5判,668頁,2色刷,ソフトカバー,箱入り)。最近は魅力的なエクササイズ中心に広まってきたSGEですが,本書でSGEの源流「ふれあいから自他発見へ」の視点でとらえ直して,これまでの蓄積を再構築しています。SGEは初めての人から,コアな経験者まで,だれもが読める作りになっています。
さる11月下旬に,『構成的グループエンカウンター事典』の著者,約40人が集合して,完成を祝う会が行われました。執筆や編集の苦労話を語り合ったり両國分先生の本書への思いを聞きました。SGEの新しい一歩を踏み出すスタートとなる会でした。
写真はこちらへ。なお公開は参加者限定です。当日参加できなかった執筆者はこちらへメールをお送りください。パスワードをご返送します。
國分康孝先生がリーダー,國分久子先生がサブリーダーを務める2泊3日の集中的な構成的グループエンカウンター合宿(ジェネリックSGE)の記録が本になりました。
カウンセリングを実況する本がないように,構成的グループエンカウンターを実況する本はほかにはありません(管理者の知るかぎり)。3日間の進行が,メンバー(参加者)の内省によって語られます。ただの感想ではなく,どのような自己発見があったか,そしてさらに本の中でも國分リーダーが,いっそうの自己発見を求めるコメントをつけています。
構成的グループエンカウンターは,自己発見をひたすら迫り,それを支える体験であることがわかります。本を読むことで合宿に参加する疑似的な気持ちがわいてきます。読んだ人からは,何度も同じところで涙がこぼれる,という感想を聞いています。
○『構成的グループ・エンカウンター』(片野智治著・駿河台出版社)刊行
エンカウンターは人のありがたみと縁をしみじみと感じる。エンカウンターは生きる勇気がわいてくる。読者に「我もあなたも,SGEを介して人生を大切に生きていこう」と著者の声が聞こえてくる・・・。
本書を一読すると,構成的グループエンカウンターがわかった!というよりも先に,SGEを通した著者の願いや,SGEを継承し拡げてきた著者の人生行路を感受せずにはいられません。著者と読み手のエンカウンター体験が,いまここで繰り広げられているようです。
もちろん内容としては,構成的グループエンカウンターの概要を,万人が読みやすく解説されています。
基本エクササイズを36上げ,その思想的背景を説明する(第2章)。SGE体験の局面を段階別に整理する(第3章),学校実践の際の考え方とツボがまとまっている(第4章)など,表面的な手順にとどまらない,解説です。
ところで,本書で述べるSGEを「國分エンカウンター」と呼び,特徴づけていることは,SGEを味わい理解する上で,貴重な通過点となるような気がします。いよいよSGEが掲げる人生観を,言葉にして,認識する段階かもしれません。本ホームページでもおいおい挑戦していきたいものです。(管理者・東)
SGEに関する問い合わせが,著者や実践者に多く寄せられています。なかには無理なお願いや失礼なものもあり,対応する方が苦慮される場合があります。すべて善意で対応していただいていますので,本ホームページでは,以下のルールを呼びかけます。
・問い合わせを受ける人は,善意で応じているので,必ずしも十分に答えるべき義務はありません。 事情を説明して・聞いて,できることとできないことを明確にして,合意してください。
・問い合わせは,相手の都合を考慮してください。電話なら「今よろしいですか」,手紙なら「突然のお願いで恐縮ですが」と相手の事情に配慮をしてください。至急の求めに応じるのはむずかしい場合が多いです。
・返事や何かの郵送を求めるときは,切手を貼った返信用封筒を同封してください。
・双方の社会的地位にかかわらず,お願いをする相手には敬意を表してください。
本ホームページでは,エンカウンターのネットワークなどを通じて,実践者同士の協力を奨励しています。だれもが気持ちよく協力し合えるように,貴重なこの善意の輪がなくなってしまわないように,みなさまのご協力を得て,呼びかけたいと存じます。
○研修会情報にSGE・キャリアガイダンスワークショップ10月7-8日の情報を紹介。
○研修会情報にSGEのワークショップを12月東京で行う1泊2日の研修会情報を紹介。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」に新しい協力者・谷鹿賢一先生(東京)にご協力いただきました。保育学生の方への実践です。
○カウンセリング面接過程の実習講座(埼玉県教育カウンセラー協会)の情報を掲載。
○文献案内に上越市の矢川咲子先生からいただいた『構成的グループエンカウンターの小学校1年生への適用』を紹介。ご提供ありがとうございます。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」に新しい協力者・山下みどり様(鹿児島)にご協力いただきました。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」に協力者・高橋晋也先生(山形)に,ご自身のHPのリンク先の変更をご報告いただきました。
○いじめシンポジウム(講師:山脇由貴子・諸富祥彦)6月10日の案内を掲載。
○教育にエンカウンターやカウンセリングを生かす意義を問うシンポジウム「教育の今日的課題-教育カウンセリングの果たす役割-の案内を掲載。
○さいたまQ-U研究会の「学級経営コンサルテーション」の2007年情報を掲載。
○細研修会情報に8/17-19のエンカウンター体験ワークショップの情報を紹介。
○埼玉県教育カウンセラー協会主催「サポートグループ・事例スーパービジョン」学習会の2007年情報を掲載。
○研修会情報にSGE・キャリアガイダンスワークショップ6月16-17日の情報を紹介。
○トップページのNewsに,鹿嶋先生が出演するNHK「プロフェッショナル」(4/3)の情報を紹介。
○研修会情報に3月26日に成蹊大学で行われる「受牛づくりネットワーク・授業成立の基礎技術」の情報を紹介。
○研修会情報に3月3日に法政大学で行われる「VLF・SSTによる授業開発研究会」の情報を紹介。
○研修会情報に12月25-26日に猪苗代町で行われる「心とこころのふれあい講習会」の案内を紹介。
○研修会情報に11月4日に銚子で行われる「教育カウンセラー スキルアップ講座 in 銚子」の案内を紹介。
○研修会情報に12月9日に千葉で行われる「エンカウンター スキルアップ講座」の案内を紹介。
○研修会情報に10月18日に千葉で行われる「Q-U検査とグループエンカウンターの有効な使い方」の案内を紹介。
○研修会情報にSGEのワークショップを11月,12月,来年の1月分の情報を紹介。
○エンカウンターの体験談を,進路指導に生かした先生からいただきました。貴重な先生対象の研修会での参加者の反響です。
○研修会情報に5月21日に千葉で行われる教育シンポジウム「不登校それぞれの生き方を見つめて」の案内を紹介。
○埼玉県教育カウンセラー協会主催「教師のサポートグループ・事例スーパービジョン」学習会の2006年情報を掲載。
○研修会情報に8月18-20日に行われる構成的グループエンカウンター体験コース(2泊3日)の案内を紹介。
○エンカウンターの体験談を,中学生の方からと進路指導に生かした先生からいただきました。
○埼玉県教育カウンセラー協会主催「学級経営コンサルテーション Q-U学習会」の2006年情報を掲載。
○研修会情報に3月27日に授業づくりネットワークが行う「授業成立の基礎技術」の案内を紹介。
○研修会情報を2006年度版の最新内容に全面的に更新。さらに月別に直結できるようになりました。
○育てるカウンセリングのページ「ブリーフセラピーを生かした不登校生徒への対応〜中学校長の介入実践〜」の完結編です。
○研修会情報に3月26-28日に神奈川で行われる構成的グループエンカウンター体験コース(2泊3日)の案内を紹介。
○研修会情報に神奈川で5月に行われる「不登校チャートによる不登校児童・生徒復帰支援ワークショップ」の情報を紹介。
○研修会情報に2月25日に荒川区立第四中学校で行われる「子育て教室」の案内を紹介。
○研修会情報に2月5日に千葉で行われる「心を育てる教育実践−スーパビジョン研修会−」の案内を紹介。
○研修会情報に2月11-12日に行われる構成的グループエンカウンター教育分析コース(1泊2日)の案内を紹介。
○育てるカウンセリングのページ「ブリーフセラピーを生かした不登校生徒への対応〜中学校長の介入実践〜」の続編です。
○研修会情報に12月11日に千葉で行われる「エンカウンタースキルアップ講座」の案内を紹介。
○研修会情報に3月25-30日にイギリスに出かける「イーストアングリア大学でのロジャース派カウンセリング体験ツアー」(諸富祥彦先生同行)の案内を紹介。
○研修会情報に1月7-9日に行われる構成的グループエンカウンター体験コース(2泊3日)の案内を紹介。
○リンク集にエンカウンターのビデオを製作している潟eレマックさんをを加えました。
○研修会情報に10/1-2「構成的グループエンカウンターリーダーコース」の情報を紹介。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」に新しい協力者・大脇啓郎先生(鹿児島)にご協力いただきました。
○埼玉県教育カウンセラー協会主催「教師のサポートグループ・事例スーパービジョン」学習会の会場変更。新しくは,シーノ大宮センタープラザ・生涯学習センター。
○育てるカウンセリングのページに,VLFの提唱者セルマン教授の講演会を紹介。。
○研修会情報に7/31「構成的グループエンカウンターグループ入門ワークショップ」と8/11-12「構成的グループエンカウンターリーダーコース」の情報を紹介。
○研修会情報に「構成的グループエンカウンター山口会場体験コース」の情報を紹介。
○新しく育てるカウンセリングのページをつくりました。最先端の実践を紹介します。今回は,「ブリーフセラピーを生かした不登校生徒への対応〜中学校長の介入実践〜」です。
○埼玉県教育カウンセラー協会主催「学級経営コンサルテーション Q-U学習会」の2005年情報を掲載。
○埼玉県教育カウンセラー協会主催「教師のサポートグループ・事例スーパービジョン」学習会の2005年情報を掲載。
○研修会情報に7月28-30日に行われる構成的グループエンカウンター体験コース・秋田会場(2泊3日)の案内を紹介。
○研修会情報に5月3-5日に行われる構成的グループエンカウンター体験コース(2泊3日)の案内を紹介。申し込みは3月13日まで。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」に新しい協力者・内山淳様(山口)にご協力いただきました。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」の学習機関・研修会で全国学校教育相談研究会へリンクを張りました。
○研修会情報に神奈川で3月に行われる「不登校チャートによる不登校児童・生徒復帰支援ワークショップ」の情報を紹介。
○文献案内に山形県羽黒町立第一小学校からいただいたエンカウンターを使った研究授業の研究紀要を紹介。ご提供ありがとうございます。
○「Nes」に授業づくりネットワークで2/6に行われた「Q-U学習会」の報告を紹介。この頁すぐ左。
○研修会情報に授業づくりネットワークで行われる「Q-U学習会」の情報を紹介。
○エンカウンターのネットワーク「E-net2000」に新しい協力者・岩田将英先生(千葉)にご協力いただきました。
○研修会情報に「神奈川・構成的グループエンカウンター体験コース」の情報を紹介。

【 81】 社会構成主義と心理学

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[引用サイト]  http://www.users.kudpc.kyoto-u.ac.jp/~c54175/research/theoretical_study/T-012.htm

「行為(認識を含む)とその対象は、ことごとく集合流の一コマであり、集合流の一コマとしてしか存立しえない」----
社会構成主義はメタ理論である。研究哲学と言ってもよいだろう。したがって、個別的な研究を発表する中で、「社会構成主義に基づき云々」などと言及する類のものではない。
社会構成主義は、論理実証主義に対抗するメタ理論である。確かに、原理的には、そのとおりである。しかし、この点については、周到な考察を必要とする。若干結論を先取りするならば、社会構成主義に基づく研究においても、後述する一次モード(現象を把握し、実践の対象とする段階)の研究スタンスは、論理実証主義と何ら変わらない。しかし、それに続く二次モード(先行する一次モードの現象把握と実践を相対化する段階)における現象把握の改訂は、一次モードの把握がまちがっていたことや不完全であったことを意味しない。ここが、論理実証主義との決定的な違いである。普遍的な視点から外在的事実を把握しようとする論理実証主義では、現象把握(理論やモデル)の改訂は、過去の現象把握の不完全さ、誤りを意味する。
第1に、社会構成主義とは、「社会」、「世の中」という言葉が当てはまるくらいに大域的な集合体だけを想定し、行為や認識は、そのような大域的集合体によって決定されることを主張する社会決定論の一種である、とみなす誤解がある。もちろん、社会構成主義が、そのような大域的集合流を射程に入れていることはまちがいない。しかし、それに加えて、問題とする現象に即して、大小、長短さまざまな集合流も射程に入れられる。現象によっては、ある人をめぐる、小規模で短期的な集合流が重要となることもある。社会構成主義は、行為やその対象を、さまざまな集合流が合流してできる複合的な集合流の中に位置づける。
第2に、社会構成主義は、物理的実在を否定している、という誤解がある。この誤解には、「現実はすべて社会的に構成される」という社会構成主義者のセリフが災いしている。このセリフは、社会構成主義の認識論的特徴をアピールするセリフではあるが、認識論的側面のみを強調しすぎている。このような過激なセリフを聞けば、大地震が起こったのも社会的構成の結果なのか、生まれたばかりの赤ん坊が、100メートルを10
社会構成主義は、決して、物理的制約を否定しているわけではない。しかし、原理的には、その物理的制約について何か一言でも発するとすれば、それは、すでにして社会的構成の産物、集合流の一コマである。とくに、この点については、自然科学(自然科学的事実)との関係をどうとらえるかが重要となるが、これについては、後にあらためて述べることにしたい。
通常、われわれは、人間といえば、皮膚で画された肉体、しかも、その肉体の内部のどかに、何かを感じたり考えたりする心(精神)を有する肉体をイメージする。一言で言えば、人間とは、「心を内蔵した肉体」であるという人間像を、われわれはもっている。
しかし、「心を内蔵した肉体」という人間像は、私たちの素朴な日常経験から自然に形成されたものではない。この人間像は、特定の歴史的経緯、および、生育史的経緯を経て構成された、まさに社会的構成の産物なのだ。本章では、この点について詳しく述べるゆとりはない。この人間像が素朴な日常経験と矛盾さえしていることは、廣松(1982,
1993, 第2編第1章)において、きわめて論理的に述べられている。また、Coulter(1979)は、「肉体に内蔵された心」が、日常の言語活動を通じて社会的に構成された観念であることを明解に論じている。さらに、「心を内蔵した肉体」という人間像が,どのような歴史的、生育史的経緯を経て形成されたのかという点については、大澤(1990)が社会学的身体論の立場から卓抜した考察を行なっている(廣松、大澤のわかりやすい解説については楽学舎(2000)を参照)。ちなみに、わずか100年前の日本には、「肉体に内蔵された心」で判断や意思決定をなし、それが格段に重視される「個人」の観念は存在しなかった(柳父,
ここで、ミクロ・マクロリンクモデルと呼ばれるモデルについて、一言ふれておこう。個人(=心を内蔵した肉体)の状態(ミクロ)を表現するパラメター群と、個人の集合全体の状態(マクロ)を表現するパラメター群の間の相互規定関係を想定するモデルは、ミクロ・マクロリンクモデルと呼ばれている。確かに、このモデルは、一次モード(後述)における一つのモデルとして有用な場合がある。しかし、このモデルは、決してメタ理論ではなく、あくまでも、一次モードにおける個別モデルの一つにすぎない。
ミクロ・マクロリンクモデルの醍醐味は、ミクロについて比較的単純な仮定を立てることによって、マクロの質的変動を説明するところにある。筆者の印象にすぎないが、このモデルが有効なのは、定量的な数理モデルを用いることが可能な現象(Weidlich
1983)、あるいは、定性的なモデルならば、「合成の誤謬」を指摘できるくらいの現象に限られるように思われる。このモデルを、あたかもメタ理論であるかのように、むやみに使ってみても、トートロジカルな言説しか出てこない----例えば、X的社会はX的個人を作り出し、X的個人はX的社会を作り出す、のような。
「心を内蔵した肉体」という人間像は、「外界と内界」を区別する常識と表裏一体である。「肉体に内蔵された心」は内なる世界、すなわち、内界である。一方、外なる世界、すなわち、外界は、内界にどのように捉えられるか(認識されるか)とは無関係に、それ本来の姿で存在する、と考えられている。外界には、皮膚の外側のみならず、皮膚の内側も含まれる。内臓は皮膚の内部にあっても外界である。内臓の状態を感じる(認識する)とは、皮膚の内部にある外界(内臓)を、同じく肉体に内蔵された内界に捉えることである、と考えられている。
社会構成主義に立つならば、「内界−外界」パラダイムは棄却される。強いて、それに代わるパラダイムを言えば、「集合流−制約条件」パラダイムである。いかなる集合流もが可能なわけではない
いかなる行為(とその対象)もが可能なわけではない。集合流の制約条件は存在する。しかし、原理的なレベルでは、制約条件に言及しうるとすれば、その言及は一つの集合流のなせるわざであり、したがって、社会的構成の産物である。ここでも、自然科学的事実をどう位置づけるかが問題になるが、これについては後にまわす。
自然科学は、外界と内界を区別した上で、内界の影響を極力排除し、外界のあるがままの姿を見出そうとする。その意味で、自然科学も、いかに外界だけを対象としていても、その前提としては、先に述べた外界と内界を区別する常識に立っている。外界と内界の区別を認めた上で、内界の影響(主観的影響)を排除して、外界の事実(客観的事実)を探求しているのである。唯一の例外は、内界(心)を自然科学的に探求しようとする心理学である。
自然科学には、外界の事実を探求すること以外に、もう一つ大きな特徴がある。それは、徹底的に言説の非人称化を追求する姿勢である。人称的言説とは、言説の主体(誰が言ったか)の如何によって、言説の内実や妥当性が左右されるタイプの言説である。それに対して、非人称的言説とは、言説の主体の如何によって、内実や妥当性が左右されないタイプの言説である。自然科学は、徹底的に言説を非人称化し続ける運動である(注2)。
外界に関する純粋に非人称的言説は、とりもなおさず、万人にとっての普遍的言説である。また、万人にとっての普遍的言説は、もはや、単に言説というよりも、万人にとって客観的に妥当する事実、すなわち、客観的事実である。ここに、外界の客観的事実を言説に写し取るという論理実証主義が、自然科学のメタ理論となる理由がある。
外界に関する非人称的言説の追求という自然科学の特徴は、その研究方法上の鉄則として具現化する。すなわち、自然科学においては、研究者(観察者)と研究対象(観察対象)の間には一線が引かれ、研究者は一線のこちら側から、一線の向こう側に据えた対象を研究(観察)する。それが、自然科学の鉄則である。研究者が、一線を乗り越え、対象を意図する方向に変化させるなど、御法度である。対象に測定器具を装着する場合、対象の変化を見るために対象に操作を加える場合も、それによって、見ようとする対象の性質そのものを変化させてしまったのでは、元も子もない。
しかし、人間をめぐる現象の中には、自然科学の鉄則が通用しない場合が少なくない。つまり、そもそも研究者と対象を一線で分離したのでは、対象のことがわからない現象が多いのである。ある人々のことを知ろうと思えば、彼らに頼んで、話を聞かせてもらうしかない、あるいは、彼らと行動を共にするしかない、そのような研究者と対象の相互作用を通じてしか対象を知ることができない場合が多いのだ。
研究者と対象の相互作用を通じてしか知り得ない「事実」は、すでにして研究者と対象を含む社会的構成の産物である。また、その「事実」は、誰によって語られたかが重要な人称的言説の形態をとる。ここに、社会構成主義をメタ理論とするもう一つの科学、人間科学が必要となる(杉万,
自然科学と人間科学は、いわば車の両輪である。いかに、科学哲学において、社会構成主義の立場から自然科学が論じられようとも、それは、あくまでも自然科学論にすぎない。自然科学論に基づいて自然科学が進歩したのではない。自然科学は、論理実証主義をメタ理論として進歩してきたし、今後もそうである。人間をめぐる現象の理解には、自然科学と人間科学の両方が必要となる。問題は、人間科学の立場で考究されるべきことが、自然科学の立場で考究されるところにある。従来の心理学は、そのような例にことかかない。
一つの科学の分野が成立するには、少なくとも2つの条件が満たされねばならない。一つは、研究対象の存在に対する確信であり、もう一つは、利用可能な研究方法の存在である。心理学の誕生も例外ではない。19世紀の中葉、欧米では、「心を内蔵した肉体」としての個人、とりわけ、その心を、行為の原因となる判断や思考がなされる座として重視する人間像が自明となった。心という対象が、重要なものとして自明となった。研究方法は、当時、電磁気学を中心に飛躍的な進歩を遂げていた物理学の方法、すなわち、厳密な実験的方法に求められた。こうして、心を実験的方法によって研究する心理学、自然科学としての心理学が誕生した。心理学は、個人という観念が確立した「近代」と呼ばれる時代の産物だった。
実質的な話をしよう。心理学は、ミクロ社会学(人間科学)とマクロ生理学(自然科学)に二極分解していくだろう(もう、そうなりつつある)。
このような形式で発表される生理学的研究において、前段部分(a)を担当するのがマクロ生理学である。後段部分(b)
決して、心理学という学問分野をなくせ、などと言っているのではない。約1世紀半にわたる精神物理学や生理学的心理学の歴史を考えれば、マクロ生理学にとって、「心理学」の看板は必要だ。一方、心をめぐる言説を中心テーマとするミクロ社会学にとっても、「心理学」という看板は重宝である。また、臨床心理学もある。いかに、社会構成主義的なナラティヴ・セラピーであろうとも、心の不調を訴え、「心理学」の専門家を頼るクライエントなしにはやっていけない。
人間科学について、より具体的に述べるために、人間科学の研究現場の特徴を、自然科学と対比しながら描いてみよう。ただし、人間科学といっても幅広い。以下では、研究者が、各種のフィールドに飛び込み、フィールドの当事者と共同的実践を展開するというタイプの研究を中心に論じていく。したがって、研究対象という言葉に代えて、フィールドの当事者という言葉を使いたい。
ただし、すべての人間科学の研究者がフィールドで共同的実践に携わるべきだなどと言うつもりはまったくない。むしろ、フィールド(の共同的実践)との距離については、遠近さまざまな研究者が必要である。書斎の理論家も要れば、広い歴史的・空間的視野から理論を展開する研究者も要る。
一般に、人間科学は、行為も、行為の対象も集合流の一コマとしてのみ存立するという社会構成主義の立場に立つ。論文を書くという行為であれ、フィールドの共同的実践であれ、研究者が、ある対象について意味ある行為をなし得るとすれば、研究者自身も、ある集合流の中に織り込まれているからだ。ある集合流に織り込まれているということは、時間の長短、空間の大小はさまざまであろうとも、研究者が何らかのローカリティ(特定の時空間)に身を置いているということだ。決して、ユニバーサリティの中(時空を超えた位置)にいるのではない。
とりわけ、フィールドの当事者との共同的実践においては、ローカリティに身を置くという特徴が鮮明になる。共同的実践は、特定の時期(時代)に、特定の場所で、特定の人々によって行われる。もちろん、時期の長い短い、場所の広い狭い、人々の多い少ないは、さまざまである。しかし、そのような違いはあっても、共同的実践は、限定された時期に、限定された場所で、限定された人々によって行われる。人間科学の知識は、基本的に、限定された時期と場所における限定された人々による共同的実践、つまり、ローカリティの中から生まれる。
一方、自然科学は、すでに存在していたけれども、人間が知らなかった事実を発見しようする。その事実は、場所を超えて、時代を超えて妥当するユニバーサル(普遍的)な事実である。つまり、自然科学は、普遍的事実を探求する科学である。普遍的事実を探求するには、事実についての知識が普遍的に正しいことを、実験や観察によって実証しなければならない。したがって、自然科学の目的は、普遍的事実の「実証」だと言える。それに対して、人間科学の目的は「実践」、共同的な実践である。
人間科学の目的が実践であるからといって、データ収集や観察が人間科学に不要だなどというわけではない。データ収集や観察は、人間科学にとっても非常に重要である。しかし、人間科学におけるデータ収集や観察は、あくまでも共同的実践のためのものである。それに対して、自然科学におけるデータ収集や観察は、普遍的事実を実証するためのものである。自然科学のデータや観察結果は、場所を超え、時代を超えて妥当する事実(現象)
人間科学のデータ収集や観察は、ローカルな共同的実践の中で、その共同的実践のために行われる。共同的実践を行なおうとすれば、現状をよく観察しなければならないのはもちろんだ。必要ならばデータも集めなければならない。現状のみならず、過去のいきさつや歴史について、よく調べてみる必要性も出てくる。あるいは、将来について、予想やシミュレーションをしてみることが必要になる場合もある。このように、人間科学にとっても、データ収集や観察は重要である。しかし、人間科学のデータ収集や観察は、あくまでも、ローカルな現状、過去、将来を把握するためのものである。決して、場所を超えて、時代を超えて妥当する普遍的事実を発見するためのものではない。
自然科学は、現在を理解するに当たって、過去遡及的に「原因」を解明し、その原因の結果として現在を理解する。しかる後に、諸前提の大枠に変化がなければ、過去から現在に至る原因−結果関係を未来に外挿する。この意味で、自然科学は、第一義的には、過去遡及的(バックワード)な性格をもつ。
これに対して、人間科学は、現在を、未来志向的に、「目的因」への通路として位置づける。そして、あくまでも目的因に向かっての運動のために、現状の詳細、および、過去から現在に至った道のりが、社会的に構成される。この意味で、人間科学は、第一義的には、未来志向的(フォワード)、ないし、価値志向的な性格をもつ。われわれが、工学に未来開拓的な性格を感じるのは、工学には、すでにして、人間科学的要素が含まれているからである。工学は、人工物についての自然科学という側面と、人間科学としての側面を併せ持っている。
実践には、必ず目的がある。また、実践は、必ず何らかの価値観に立って行われる。そうであれば、実践の中から生まれる人間科学の知識にも、何らかの目的・価値観が前提になっているはずである。さらに言えば、人間科学の知識は、その知識の前提となっている目的や価値を共有する人々の実践にとってこそ、意味ある知識である。
一方、自然科学では、特定の目的や価値観によって知識が影響されるなど、もってのほかである。医学書に書いてある知識は、いかなる目的や価値観を持っている人にも当てはまる。自然科学は、目的や価値観などとは無関係に存在している事実を取り扱う。
それに対して、人間科学は、目的や価値観と分かちがたく、結びついている。したがって、ある人間科学の知識を使うということは、その知識の発信者と目的や価値を共有していくことを意味する。それだけに、人間科学の知識をつくりだす研究者も、人間科学の知識を使おうとする人々も、自らの目的や価値観を問い続けることが必要である。
現状把握が、外在的事実を保証せず、単なる社会的構成による虚構にすぎないと考えるならば、それに基づいて自らの行動を決することなどできはしない。棒立ちになるか、あるいは、ニヒリズムを決め込むしかないだろう。もし、社会構成主義が、無力感とニヒリズムしかもたらさないとしたら、まさに有害無益。そんなメタ理論など、ない方がましだ。では、どう考えるのか。
ローカルな現状、過去、将来を把握し、その把握に基づいて問題解決に取り組む段階を、共同的実践の一次モードと呼ぶことにしよう。この一次モードでは、データ収集や観察も必要になる。また、研究者は、さまざまな概念や理論を持ちこむ。一次モードには、一線の彼岸に据えた対象を、一線の此岸から観察するスタンス、すなわち、論理実証主義的なスタンスが必要だ。
重要なことは、一次モードの共同的実践は、必ず、ある前提、しかも、気づかざる前提の上に立った実践である、ということである。「気づかざる」というところが重要である。気づかざる前提に立たない共同的実践など、そもそも不可能である。気づかざる前提に立って初めて、共同的実践を行なうことが可能になる。
自分たちが前提にしていることを、徹底的に洗い出し、考えぬいたとしても、考えついた前提の、そのまた根底に、必ず、「気づかざる前提」が残る
いや、「残る」という表現は、正確には間違いだ。「気づかざる前提」を見極めることは、それ自体、協同的実践を展開する一つの様式に他ならない。そうであれば、「気づかざる前提」を見極めようと努力する協同的実践は、見極めつつも、さらなる見えざる前提を作り出しているはずだ。
ところが、共同的実践が進行するうちに、それまでの実践の根底にあった「気づかざる前提」に気づくことがある。この「気づかざる前提」に気づく段階を、二次モードと呼ぶことにしよう。「あっ、そうか。今まで、そういう前提に立っていたのか、そういう価値観に縛られていたのか」と、それまでの(一次モードの)前提に、過去形で気づくモードである。こうして、二次モードを経て、新たなる一次モードに入っていく。
新たなる一次モードでは、現状、過去、将来の把握の仕方が、前の一次モードとは異なってくる。また、前の一次モードで行なった共同的実践の意味あいも異なってくる。しかし、今回の一次モードの共同的実践もまた、気づかざる前提
人間科学の現場は、一次モードと二次モードの繰り返し、一次モードと二次モードの連続的交替運動である。この2つのモードの交替運動は、小さな(微視的な)交替運動と大きな(巨視的な)交替運動に分けることができる。まず、微視的な交替運動が、日常的に進行している。小さな気づき、小さな発見は、すべて、一次モード→二次モード→(新たなる)一次モードという交替運動である。もちろん、この場合には、気づかざる前提に気づいたという感覚は伴わないし、気づかざる前提が大きく変化するわけでもない。しかし、いかに小さい変化ではあるにしても、気づかざる前提は、必ず、変化している。感覚的には、特に前提が変化したという感覚はなくとも、現状、過去、将来の事実を徹底的に調べ、実践の対象としていくことによって、実は、気づかざる前提の方も、徐々に変化しているのだ。この微視的な交替運動が数多くなされるところに、大きな(巨視的な)交替運動に向けてのエネルギーが蓄積されていく。
大きな(巨視的な)交替運動の場合には、二次モードに入ったとき、まさに、気づかざる前提に気づいた、という感覚が伴う。「そうか、自分たちは、そう思い込んでいたのだな(そういう、気づかざる前提に立っていたのだな)」と、目の上の鱗が落ちたような感覚を覚えることもあるだろう。このような大きな交替運動が生じると、それまでの(一次モードの)実践や、その基礎になっていた現状・過去・将来の把握が大きく変化する。
以上、一次モードと二次モードについて述べたことは、人間科学のみならず、自然科学にも当てはまるようにみえる。確かに、自然科学においても、日ごろの小さな発見、あるいは、新奇な発見をきっかけに、おおもとにある基礎理論(前提)が改訂されてきた。そして、基礎理論が改訂されると、従来の多くの知見が、改訂された基礎理論の上に再編成される。このプロセスは、人間科学について述べた、一次モード→二次モード(基礎理論の改訂)→新たなる一次モードと同じように見える。
しかし、自然科学では、このような基礎理論の改訂を続けることによって、普遍的な事実に接近できるという大前提がある。逆に言うと、普遍的な事実に接近していくためにこそ、基礎理論の改訂がなされるのである。一方、すでに述べたように、人間科学は、普遍的事実を追求する科学ではない。人間科学は、ローカルな共同的実践のための科学である。一次モードの共同的実践が、二次モードを経て、新たなる一次モードの共同的実践に入ることによって、当事者や研究者は、自らの実践や、そのための現状・過去・将来の把握に対して確信を深めていくだろう。しかし、そのことは、普遍的に妥当する事実(時代や社会を超えて、万人に妥当する事実)を手にすることを意味しない。
二次モードは、一次モードの協同的実践を深化させる中から、蓋然的に到来する。しかし、二次モードは、先行する一次モードの誤りを指摘するのではない。もちろん、「気づかざる前提」に気づいたときには、「そう思いこんでいたけれども誤りだった、実は、----」というセリフが飛び出すだろう。しかし、その「誤り」は、外在的事実に対する認識の誤り----
とは異なる。外在的事実を前提としない人間科学においては、現状認識にせよ、理論にせよ、いかなる言説も、すでに、自らの否定を潜在的に携えている。人間科学の「誤り」は、そもそも潜在していた否定の顕在化に他ならない。2次モードにおける過去の改訂は、決して過去の誤りを意味しない。それは、協同的実践の深化
ローカルな共同的実践についての共同メッセージは、特定の人物、特定の場所、特定の時代に彩られた生々しい実践の記録である。生々しい記録は、それなりに人の心をうつものであるが、同時に、他の場所、他の時代の他の人々の実践に結びつきにくいのも事実である。他の人が、参考にしようと思っても、「あの人物だったから、あの場所だったから、あの時代だったから、できたのだ」と思わざるをえない。
そこで、生々しい記録を、ちょっとだけ抽象化してやる必要がある。つまり、ちょっとだけ一般的な概念を使って、直接の当事者ではない人にも理解できるようにするのである。この抽象化の作業も、研究者と当事者が共同して行なう。おそらく、研究者の方が、「こういう概念が使えるのではないか」と提案する場合が多いだろう。研究者は、その概念について、かみくだいてかみくだいて、わかりやすく説明しなければならない。また、当事者の方も、決して研究者の言いなりになってはいけない。自分(たち)の実践が、その概念で的確に表現されるのか、また、その概念で自分(たち)の実践をメッセージにしてよいのか、徹底的に考え、研究者とも議論しなければならない。こうして、当事者と研究者の共同による、人間科学の知識が生まれ、発信される。その知識は、特定の人物(たち)が、特定の場所、特定の時代に行なった実践、つまり、ローカルな実践を、ちょっとだけ抽象化した知識である。
こうして、あるローカルな場所・時代から発信された知識は、抽象化のおかげで、他のローカルな場所・時代に伝播していく。あるローカルな場所・時代から発信された知識は、他のローカルな場所・時代にいる人(たち)によってキャッチされ、実践の参考にされるかもしれない。そうなれば、地点と時点を異にする2つのローカルな場が結びつくことになる。言いかえれば、2
もちろん、キャッチした知識をそのまま使うとは限らない。批判も結構である。一つのローカルな場所・時代での実践の中にも、当事者と研究者の対立があるように、異なる地点・時点の間の共同的実践にも批判や対立はありうるはずである。むしろ、そのような批判や対立を通じて、批判する側、される側の共同が深まり、ローカルなメッセージ(知識)が、より広範な人々のメッセージ(知識)へと鍛えられていく。
研究者と当事者の共同的実践において、研究者が、研究者として、なすべき貢献は、一にかかって、理論に基づく貢献であろう。理論に基づく貢献を除外すれば、研究者としての貢献と研究者以外の人の貢献に、本質的な違いはないはずである。
ここに言う理論の範囲は広い。個別の現象、個別の実践についての理論もあるだろうし、グランドセオリー、メタ理論の類もあるだろう。また、データ解析、モデル構成など、研究手法についての理論もあるだろう。また、いかに人間科学的なフィールドワークであっても、自然科学の理論や概念も必要になる。
すでに述べたように、ローカルな共同的実践は、一次モードと二次モードの連続的交替運動として進行する。理論は、この交替運動に寄与するものでなければならない。まず、一次モードにおいては、理論には、現状と過去の把握、将来の予測に役立つこと、および、実践の指針や計画を立てることに寄与することが求められる。次に、一次モードにおける「気づかざる前提」を常に問い続け、二次モードへの進展可能性を高めることも求められる。さらには、明示化された「気づかざる前提」に基づいて、先行する一次モードの認識や実践を再定位し、新たなる一次モードへの進展に寄与することが求められる。
理論は、ローカルな共同的実践の記録や、そこから紡ぎ出された言説を、抽象化、一般化することにも寄与しうる。理論によって抽象化、一般化された記録や言説は、他のローカルな共同的実践への伝播力を獲得する。こうして、ローカルな共同的実践が、インターローカルな共同的実践へと拡大する可能性が開かれる。
すでに述べたように、フィールドとの距離については、遠近さまざまな研究者が必要である。書斎の理論家も要れば、広い歴史的・空間的視野から理論を展開する研究者も要る。ただ、自然科学の理論家が、どこか末端で、試験管を振って実証する同僚を念頭に置いているのとは対照的に、人間科学における書斎の理論家や広い歴史的・空間的視野に立つ研究者は、どこか末端で、現実の当事者と協働する同僚を念頭に置いておく必要があるだろう。
原理的レベルでは、人間科学におけるデータと理論は、抽象度を異にする2種類の言説として位置づけられる。自然科学のように、外界の事実の描写である理論を、データで実証するという関係にはない。人間科学でも、一次モードの内部にだけ注目すれば、理論がデータで実証されるという関係はある。しかし、一次モードと二次モードの交替運動を通して見れば、決して、データによって理論が実証されたり、棄却されたりするのではない。
人間科学では、相対的に抽象的な言説である理論言語と、相対的に具象的な言説である観察言語は相補的な関係にある。すなわち、両者が、相補的に、「事実」の社会的構成と共同的実践の深化を促進する。理論言語は、観察言語と組み合わされることによって、社会的構成と共同的実践への直接的有用性を獲得する。一方、観察言語は、理論言語と組み合わされることによって、異なる観察言語の間の接続性を獲得する。
自然科学であれば、新しい理論が提出され、一旦、データによって実証されれば、その理論を否定するデータが出現しない限り、追加的な実証データに意味はない。それに対して、人間科学では、人間や環境を異にするさまざまなフィールドの観察言語が、同じ理論言語と結びつくことは、さまざまなフィールド間の共同的実践が、理論言語によってインターローカルな関係に入っていくことを意味している。
理論言語も観察言語も、定性的と定量的に大別できる。定性的な理論言語には、日常言語による理論言説はもちろん、代数系の数理モデルも含まれる。定量的な理論言語には、解析系の数理モデルが含まれる。定性的な観察言語には、エスノグラフィー、自由記述形式のアンケートデータなどが含まれる。定量的な観察言語には、順序尺度、間隔尺度、比率尺度のレベルで収集された数量データが含まれる。
動員できる言説の種類が多様なほど、豊かな言説を紡げるのは当然である。従来の人間科学を振り返ると、理論言語も観察言語も定性的なものに偏りすぎている。観察言語の場合、エスのグラフィー的記述が大半を占めているし、理論言語の場合も、日常言語によるものがほとんどである。これには、心理学のカリキュラムで、基礎的な数学のトレーニングが不足していることも影響していよう。幸い、最近では、MATLABやMathematicaのようなパソコンツールが普及し、数学をビジュアルにエンジョイしながら学べるようになっている。これを利用しない手はない。
人間科学においても、定量的な観察言語をもっと活用すべきである。その場合、従来の心理学で行われてきたデータ解析を批判的に見直しておく必要がある。かりに論理実証主義のメタ理論に立つとしても、常軌を逸しているとしか思えない現状があるからだ。以下、社会心理学およびその周辺領域に関して、問題点を提起しておこう。
少なくとも、問題点は2つある。第1は、「何がなんでも連続量を得たい」という連続量願望から生じる問題、第2は、「基礎的ではあるが、実用的ではない手法」を使い続けているという問題である。
第1の問題について。連続量への願望は、よほど強いと見える。なにしろ、アンケート調査で、ある意見を提示して、賛否の程度を調べたデータが、あっという間に、「非常に賛成」5点、「どちらでもない」3点、……とされてしまう。しかも、一流といわれる学術雑誌の掲載論文にすら、平均3.45、相関係数0.789といった数値が、少数点以下2桁、3桁の精度で、恥ずかしげもなく報告されている。そこには、有効数字についての常識のかけらも見られないばかりか、測定精度を1桁あげることに必死の努力を傾注する理系の研究者に対する愚弄さえ感じられる。
このような点数化は、しばしば、パイオニアの名をとってリカート法などと呼ばれるが、もし、リカート(R. Likert)が、このようなリカート法の隆盛を目の当たりにしたら、おそらく、「穴があったら入りたい」と赤面するだろう。このような点数化に基づいて、さらには、多次元正規分布なる、およそ非現実的な仮定まで立てて因果パスを求める共分散構造分析など、パソコン遊び以外の何ものでもない。もちろん、簡便法として、平均値が度数分布の代わりをしたり、相関係数がクロス表の代わりをすることはある。しかし、せいぜい、そこまでであろう。
第2の問題について。t検定や分散分析を代表とする統計的検定手法は、あくまでも、一般教養として勉強しておかねばならない手法ではあるが、社会心理学や周辺分野では、ほとんど実用的ではない。分散分析を代表とする手法は、ちょうど、自動車教習所で習う運転方法と同じである。もちろん、そのままの運転でうまくいく場合もある(例えば、生理学的実験、品質管理、農業試験、等の分野)。しかし、そうでない場合もある。おおざっぱに言うと、分散分析に代表される手法が有効なのは、「3シグマ法」が意味をもつ分野、つまり、「平均値の両サイド±3シグマ(標準偏差)」の区間推定が意味をもつ分野だろう。5段階のリカート法で収集したデータの平均値と分散を見るならば、大方、区間推定値は、1から5の範囲を超え出ているのではないか。
では、いかなる手法を用いたらよいのか。第1に、連続量願望に陥ることなく、反応カテゴリー(選択肢)への反応数、つまり、パーセンテージを熟視することである。あるいは、下手な相関係数など求めずに、2元クロス表を熟視することである。もちろん、論文にも、これらのパーセンテージやクロス表が報告されるべきである。この方が、読者は、反応カテゴリーという「言説」に対する被験者の反応を知ることができる。
第2に、多変量解析に際しては、相関係数に基づく因子分析などに頼らず、反応カテゴリーをそのまま活かした手法を採用すべきである。林の数量化3類(あるいは、コレスポンデンス分析)は、現在でも、有力な分析手法である。
われわれが取り扱う社会現象において、線形の関係は、むしろ例外とさえ言える。言いかえれば、いかなる非線形の関係があるかを見出すところに妙味がある。相関係数を用いたのでは、この妙味の可能性を最初から排除してしまうことになる。
第3に、帰無仮説(という特殊なモデル)の採否だけに限定された手法ではなく、さまざまな統計モデルを比較検討できるような柔軟な手法を使用すべきである。例えば、AICに基づくモデル選択は、有力なツールとなろう。これを用いれば、相関係数に基づく重回帰分析や判別分析に頼らずとも、外的変数と最も強い関連を有する説明変数群を選別できる。
心理学の分野で、社会構成主義を早くから最も活発に論じてきたのは、K.ガーゲンだろう。Gergen(1994a)は、社会構成主義の立場から従来の心理学の問題点を丹念に論じた批判の書である。Gergen(1994b)では、一歩進んで、社会構成主義に基づく具体的な研究の方向性を提示している。Gergen(1999)
杉万俊夫・矢守克也・渥美公秀(監訳)(1998):もう一つの社会心理学---社会行動学の転換に向けて,

【 82】 構成管理運用ガイド

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[引用サイト]  http://www.microsoft.com/japan/technet/prodtechnol/windows2000serv/maintain/opsguide/cfgmgtog.mspx

運用構成管理運用ガイド公開日: 2001年1月1日 | 最終更新日: 2004年11月30日トピック構成管理の概要構成管理推奨トレーニング コース構成管理の概要構成管理は、変更管理の制御下において、IT 環境を構成するあらゆるコンポーネント (ハードウェア、ソフトウェア、ドキュメント、プロセス、手順など) の識別、制御、追跡管理を受け持つ非常に重要なプロセスです。構成管理の目的は、構成アイテム (CI) と呼ばれる承認済みのコンポーネントのみを IT 環境で使用し、構成アイテムに対する変更を、コンポーネントのライフサイクル全体を通して、すべて記録し、追跡管理することにあります。代表的な CI として、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク装置、構成、プロセス、手順、テレフォニー装置、ドキュメント、サービス レベル契約、問題の記録などを挙げることができます。構成管理の制御下に置く CI のデータは、IT 環境内の CI 追跡管理用リレーショナル データベースである構成管理データベース (CMDB) に格納します。構成管理は、しばしば資産管理と混同されますが、後者は減価償却や原価計算などによる会計業務プロセスです。資産管理システムは通常、一定の額面を超えた価値を有する資産の情報を管理します。管理する資産情報には、業務ユニット、購入日、仕入れ業者、資産の所在地などがあります。管理される資産情報はほかの資産と関連において管理されず、主に高額な備品の所在の追跡管理に使用します。多くの組織では、まず資産管理から始め、それを発展させるかたちで構成管理に移行していきます。構成管理と資産管理の相違は、前者においては、CI と CI の関係が、IT 環境における Cl 間の相互依存関係を前提として記録されている点に求められます。この関係情報は、組織にとって非常に有益な情報です。たとえば、サーバーのメモリをアップグレードする場合、CMDB をチェックすれば、サーバーをオフラインにしたとき影響を受けるユーザーとアプリケーションを特定できます。このとき、ユーザーにアップグレードの事前通知を行えば、ユーザーは予定に合わせた行動を取ることができます。これは、CI データと共に、データ相互の関係をデータベース化しておくことが、いかに IT アクティビティの合理化につながるかのよい見本です。構成管理は多くの組織にとって業務に不可欠なプロセスとなっていますが、プロセスの実装コストに見合う効果が本当にあるのか判断に迷っている組織も少なくありません。そこで、この文書では構成管理の導入メリットを検討していきます。構成管理の適切な運用によって、構築や保守にかかるコストを補って余りある効果が期待できるからです。ほかのプロセスとの関係図 1: リリース管理、変更管理、構成管理、および他のプロセスの相互関係拡大表示する構成管理の運用の成否は、組織内の各種アクティビティの相互調整によって決まります。上図は、リリース管理、変更管理、構成管理、他の関連プロセスの相互関係を表しています。構成管理は、変更管理とリリース管理と並行的に実施されます。構成管理で最も重要なタスクは、IT 環境に実在するコンポーネントの情報を、正確に CMDB に反映させることです。そのため、コンポーネントに何らかの変更が加えられれば、逐一それを記録します。コンポーネントの変更に関する情報は、変更管理とリリース管理の両プロセスとの連携によって取りまとめられます。構成管理では、この変更情報を CMDB に記録します。次の図は、CMDB に入力情報を提供し、CMDB から取り出して利用する組織内の各種プロセスを示しています。図 2: CMDB との間でデータをやり取りする組織内プロセスCMDB に向かう矢印は入力情報を表し、各種プロセスに向かう矢印は CMDB からの出力情報を表しています。出力情報の入手については後述します。可用性管理可用性管理は、信頼性の高い、生きたコンピューティング環境を常時ユーザーに提供するためのプロセスです。このプロセスは、構成管理と連携して、メンテナンスやその他の予定されたアクティビティの影響を受けるシステム コンポーネントを決定します。両者の連携によって、システム コンポーネントのダウンタイムを最小に抑えることができます。コンポーネントがダウンする際は、影響を受けるユーザーに通知が行われます。キャパシティ管理キャパシティ管理は、現行のシステム リソースの使用量が増加し、キャパシティの限界点に近づくのに合わせてリソースの追加投入を計画し、業務ニーズに最適な IT リソースを確保するためのプロセスです。このプロセスには CMDB からキャパシティ管理用の参照情報が提供されます。CMDB の情報によって、IT 環境を構成するコンポーネントの全容を把握することができます。この CMDB 情報のおかげで、キャパシティ プランやパフォーマンス管理といったキャパシティ プラン プロセスの主要アクティビティが容易になります。変更管理変更管理は、ソフトウェアのアップグレード、システム全体のオーバーホール、体制や人事に関する変更、業務上の変更など、組織内で発生するあらゆる変更を制御するプロセスです。このプロセスは構成管理と密接に連携を取りながら、すべての変更を確実に CMDB に記録します。また、変更プロセスの全体を通じて、CMDB に反映すべきシステム アップグレード情報を、構成管理に提供します。構成管理からは IT 環境のベースライン評価の情報を受け取ります。変更管理では、この評価結果を基に、変更が IT 環境に及ぼす影響を見極めます。なお、CMDB に記録された CI はすべて変更管理の制御下にあります。言い換えれば、IT 環境で発生した CI の変更と、それに伴う CMDB の更新を承認する権限は、すべて変更管理にあります。これは非常に重要なポイントです。緊急事態対策緊急事態対策は、大規模な障害に対処するためのプロセスです。たとえば、停電によってデータ センター全体がダウンした場合や、水害、火事、テロ行為などによるダメージに対処します。CMDB 内のデータは、障害後の環境を復旧させるための見取図として利用できます。経理管理経理管理は、IT 環境の運用コストの分析と管理を担当するプロセスです。ここでは、ハードウェア、ネットワーク、トレーニング、管理者の工数、CPU 時間 (外部委託の場合)、ソフトウェアのアップグレードなどにかかわるコストを管理します。構成管理から経理管理には、ハードウェア コンポーネントの廃棄や再配置など、IT 環境の変更情報が通知されます。この場合、経理管理では、購入したソフトウェアやハードウェアの受領とインストールについて、構成管理データに照らした検証が行われる必要があります。サービスデスクとインシデント管理インシデント管理のメイン タスクは、インシデントを個別に管理し、なるべく早期に解決を図って、業務プロセスへの損失を極小化することにあります。インシデントとは、IT サービスの正常な運用を妨げる事象の総称です。インシデント管理では、CMDB を参照してインシデントの原因となった CI を特定します。この情報は構成管理にフィードバックされ、CMDB の更新によってインシデントとその影響範囲の CI が明示されます。未解決の問題は、問題管理に引き継ぎ、さらに詳細な評価と解決が試みられます。問題管理問題管理は、問題の根本的な原因を特定するためのプロセスです。問題とは、類似の現象を示す比較的軽微な 2 件以上のインシデント、または重大な 1 件のインシデントのことです。問題管理と変更管理の密接な連携によって、問題に対する解決が提示された場合、その解決案は通常、変更要求フォームに文書化されます。その後、構成管理によって問題に関するログが CMDB に記録され、その問題に関連する変更要求を追跡管理することで、後日の検索が容易になります。問題の解決策は CMDB に記録されます。新たなインシデントが発生した場合、サービス デスクではこれを再利用することができます。問題管理において CMDB は問題の根本原因を特定するツールとして利用されます。リリース管理リリース管理は、IT 環境におけるリリースの計画、テスト、導入のために、組織内のアクティビティを調整および管理するためのプロセスです。このプロセスを構成管理と組み合わせることで、最終ソフトウェア ライブラリ (DSL) へのアプリケーションの出入りを管理できます。DSL とは、IT 環境で使用されるアプリケーションのマスター コピーを格納しておくレポジトリのことです。リリース管理では、特定のリリースの影響を受ける CI やその影響の程度を判定する際にも、構成管理の情報が利用されます。セキュリティ管理セキュリティ管理は、ソフトウェアや技術インフラストラクチャなどの面から、セキュリティ規約を開発、実装、および管理し、それによって安全で安定した IT 環境を実現するためのプロセスです。CMDB に関係するセキュリティ規約とドキュメント ライブラリは、セキュリティ管理の連携と承認によって、初めて正式なものとなります。ページのトップへ構成管理構成管理では、構成アイテム (CI) の識別、記録、追跡管理、およびレポート作成を行います。収集や追跡の対象となる情報は、CI の種類によって異なります。頻繁に管理対象となる情報には、CI の説明、モデル/シリアル番号、バージョン番号、構成部品、他の CI との関係、所在地、所有者、ステータスなどがあります。CI 情報は、構成管理データベース (CMDB) と呼ばれる単一の論理データ レポジトリに格納します。このレポジトリは、たいていの場合、全社レベルで使用するサポート ツールを備えた 1 台以上のリレーショナル データベースです。小規模な組織の場合、スプレッドシートで十分実用に耐えるかもしれません。反対に、グローバルな組織では、CMDB を複数稼働させないと十分な管理は実現できません。CMDB は、組織内で利用可能な IT 環境のコンポーネントに関する情報を集約した単一の情報源であり、この情報の一元化によってシステムの信頼性、可用性、制御性が拡大します。構成管理での CI の追跡管理にデータベースを使用すれば、承認済みのコンポーネントのみが IT 環境内で利用されていることを保証できます。また、インシデントや問題が発生した場合、情報源が一元化されているので、サービス デスク、インシデント管理、問題管理など、構成管理以外の組織グループでも、インシデントや問題の影響をすばやく正確に評価することができます。これは問題の早期解決、ダウンタイムの短縮に結びつき、最終的に IT 環境の可用性と信頼性が向上します。たとえば、ユーザーの質問にすばやく回答するには、使用されているハードウェアやソフトウェアの構成情報が必要となります。CMDB が整備されていれば、サービス デスクのスタッフは必要な情報をたちどころに取り出せます。構成管理と最も密接なつながりを持つのが、変更管理です。構成管理からは、変更のリスクや影響に関する評価が提供されます。変更管理では、この情報を利用して変更の処理速度を早めることができます。これを逆の視点で言うと、CMDB に記録され、追跡管理されるのは、変更管理の制御下にある Cl だけです。変更管理の承認がない限り、CMDB の内容は変更できません。これによって構成情報の管理性が向上します。変更要求の IT 環境での実施が承認されると、まず該当する構成アイテムが CMDB に入力されます。この時点から、CI への変更と CI のステータスは CMDB 内で追跡管理されます。つまり、CMDB には環境内で実施された変更の履歴と、現在の姿が保管されます。変更管理のセクションにも説明しましたが、いったん CMDB に記録された IT 環境内の CI の情報は、変更要求プロセスを経て、最終的に変更管理によって承認されない限り、変更することはできません。 環境の現在の "姿" を常に正確で完全な状態で知ることができるように、変更管理と構成管理の両プロセスには密接な連携を持たせます。構成管理は、計画、識別、制御、ステータス アカウンティング、検証/監査という 5 種類のアクティビティで構成されています。計画アクティビティとは、構成管理の確立に関連した活動のことです。識別アクティビティは、CI の識別と記録に関する活動です。制御アクティビティは、IT 環境内で適切に CI が使用されていることを保証する活動です。ステータス アカウンティングは、CI レポートの作成に関する活動です。検証/監査アクティビティは、IT 環境内に存在する物理的な CI の情報と CMDB の内容の整合性を維持する活動です。組織内で構成管理を成功に導く条件を以下に挙げます。•役員の指示の下、構成管理アクティビティに対する組織全体のコミットメントとサポート•ポリシーや手順の作成など、構成プロセス実装に先立つ適切な計画•構成管理スタッフやユーザーに対する適切なトレーニングの実施•CMDB 内の CI 情報の維持管理を担当する人員の確保構成管理の利点次に示すように、構成管理には数多くの利点があります。•IT 環境内の CI を識別、追跡管理、制御することで IT 資産の包括的な管理を効率よく実施できます。•CI の情報を詳細に正確に提供できるうえ、経時変化を踏まえた追跡管理が可能です。•CMDB リレーショナル データベース内に IT 環境内のコンポーネント情報を記録することで、CI 間の相互依存関係を文書化できます。•ソフトウェアのリリース サイクルを短縮し、アップグレードの頻度を増やすことで、IT 資産の監視や制御を容易にします。•管理の行き届いたデータがほかのプロセスに提供されるため、それらのプロセスでは十分な情報に基づいた、速やかな決定がなされます。•IT 環境内で変更を計画する際、変更やリリースの管理プロセスで変更の影響 (ハードウェア要件やソフトウェアの競合) を判断しやすくなり、これらの管理作業が容易になります。•インシデント管理、問題管理、サービス デスクの各プロセスで、CMDB を調査ツールとして活用することにより、問題やインシデントの解決 (システムのダウンタイム削減など) が容易になります。•CI ステータスの追跡管理によって可用性管理アクティビティが容易になります。•IT 環境の現時点での詳細な構成情報を保持することで、変更の実装障害や天災が発生した場合、フェール オーバーや復旧の管理による環境の復元が容易になります。•CI の耐用年数、ソフトウェア ライセンスの更新日、保守契約などの監視によって、経理管理での IT 経理計画が容易になります。•企業内でのソフトウェア製品の不正使用を防止します。•IT 環境内の CI が正確に CMDB に反映されていることを検証することで、組織内での備品の盗難を監視できます。•IT 環境全体のデータを論理的に関連付け、単一のレポジトリに格納したうえで提供します。•各種コンポーネントを集中管理してソフトウェアやハードウェア構成の標準化を促すため、システムの保守とアップグレードが容易になります。•ダウンタイムの極少化、システムの標準化、 IT 環境の制御の強化によって、TCO を抑制できます。役割と責任ここでは、構成マネージャと構成管理スタッフの役割とその責任について概説します。構成マネージャはプロセス全体を管理し、構成管理スタッフは CMDB や関連タスクの日常的な運用を担当します。これらは役割であって、具体的な業務の説明ではないので注意が必要です。小さな組織では、同じ人が複数のロールを兼務することもありますが、大きな組織では、役割ごとにチームを編成します。ただし、構成マネージャの役割は常に 1 人の従業員に割り当てることを推奨します。構成管理に関する役割とその責任の要約を下表に示します。表 1 構成管理に関する役割とその責任役割責任チーム モデル クラスタ構成マネージャ構成マネージャは、CMDB 管理のプロセスと手順を定義します。主な業務は次のとおりです。•構成管理執行上守るべきポリシーと手順の策定•CMDB に記録する CI の範囲とレベルの決定•監査の実施とベースラインの設定•普及キャンペーンによる構成管理ポリシーの全社への徹底•構成管理スタッフの選出とトレーニング•CI の名前付け規則など、CMDB ポリシーの策定•可能な場合、CMDB 更新システムの自動化•管理職への報告書の作成と配布•変更所有者向けの、リリースの影響評価に関するベースライン報告書の提供•ターゲット環境をミラーリングするテスト環境の開発支援•リリース完了時、ターゲット環境への全変更を反映するための CMDB の更新この役割は、MOF チーム モデルに定義されたリリース ロール クラスタの一部です。構成管理スタッフスタッフ メンバは、IT 環境の特定の領域における管理業務を担当します。主な業務は次のとおりです。•最新の CI 情報とステータス情報による CMDB の更新•ドキュメント レポジトリ内のドキュメントに対するアクセスと配布の制御•CMDB の構造の変更•管理職への報告書の準備•CMDB の監査と再構築•ベースラインの文書化•インシデントや問題の解決支援 (CMDB 利用によるサービス デスク、インシデント管理、問題管理の各プロセスの支援)•構成アイテム用ストレージ (ドキュメント レポジトリ) の作成この役割は、MOF チーム モデルに定義されたリリース ロール クラスタの一部です。構成マネージャ構成マネージャの職責は、CMDB 管理のプロセスと手順の定義にあります。構成マネージャは CAB (Change Advisory Board) のメンバであり、変更マネージャと協力して、要求された変更の影響を、その承認前に明らかにし、変更実施後は IT 環境に加えられた変更をすべて CMDB に記録します。構成マネージャの主な業務は上表に示したとおりです。CAB の詳細については、変更管理に関する説明を参照してください。構成管理スタッフ構成管理スタッフの役割と責任は、構成マネージャによって定義されます。各スタッフに役割を割り当てる際、構成マネージャはスタッフに CI 情報の CMDB への記録を徹底させ、発生しうる情報の欠落を最小限に抑える必要があります。構成管理スタッフの必要人数は、組織の規模、IT 環境での変更/リリースの頻度、CMDB の自動化の程度、および CMDB への CI の記録に求められるきめ細かさによって異なります。いずれにしても、構成プロセスがほかの関連プロセスの運用に支障を来さないよう、十分なスタッフを確保する必要があります。事業所が地理的に離れて存在する場合は、各事業所にスタッフを置きます。小さな組織では、構成管理スタッフの役割はほかの役割と兼務してもかまいません。しかし、大きな組織でのスタッフの役割は、フルタイムの専任メンバを複数のグループに分割し、グループごとに特定の領域を分担することを意味します。この体制で構成管理を進めるとき、二重更新などのエラーを防止するため、CI の管理は必ず 1 人のスタッフに担当させます。スタッフ メンバの担当業務は表 1 に記載したとおりです。構成管理の主要ツールは、構成管理データベース (CMDB) です。構成内の IT コンポーネントに関する記録は、CI として CMDB 内で管理します。構成管理アクティビティ前述のように、構成管理には計画、識別、制御、ステータス アカウンティング、検証/監査という 5 つの基本アクティビティがあります。構成管理は、これらのアクティビティをフレームワークとして構築/管理します。•構成管理の計画 構成管理のスコープ、目的、ポリシー、手順、組織内でのコンテキスト、技術的なコンテキストを策定します。•構成の識別 インフラストラクチャ内で管理対象とする CI を選定し、その所有者、相関関係、仕様などによって各 CI を階層化します。 ここでは、各 CI に識別子とバージョンも割り当てます。•構成の制御 承認済みの識別子を持つ CI だけを、その作成から廃棄に至るライフ サイクルで管理し、データベースに記録します。CI の追加、変更、置換、削除に際しては、正式な変更制御ドキュメント (承認済みの変更要求など) または最新の仕様書による承認が必要です。•構成ステータスアカウンティング 各 CI の最新のデータおよび過去の変更履歴を、CI のライフ サイクル全体にわたってレポート化します。これによって、CI 情報を開発中、テスト中、使用中、廃棄済みの 4 つのステータスで追跡管理します。•構成の検証/監査 CI の物理的な有無と CMDB 内におけるデータの整合性、IT 環境における承認済み CI のみの使用に関して一連のレビューと監査を行います。構成管理計画アクティビティ構成管理計画アクティビティとは、構成管理のスコープと目的、ポリシー、手順、組織内でのコンテキスト、技術的なコンテキストを策定する作業です。構成管理計画の典型的なカテゴリ例を下表に示します。その後、各カテゴリについて詳しく説明します。表 2 構成管理計画の内容カテゴリ説明スコープと目的構成管理のスコープ (管轄)、短期目標と長期目標、業務上の最終目的を定義し、プロセス構築/実施の指標とします。ポリシーと手順構成管理の各アクティビティを実施するうえで守るべきポリシーと手順を定義します。定常的なアクティビティの計画管理職への報告書の準備や監査の実施など、定常的なアクティビティのスケジュールを決定します。ストレージ レポジトリとセキュリティストレージ レポジトリ (CMDB、DSL、ドキュメント レポジトリなど) とそのセキュリティ要件に関する情報を提供します。トレーニング構成管理スタッフ、他の IT 担当者、およびユーザーを対象に行われるトレーニングの概要を作成します。管理職への報告書管理職に提出する報告書の種類と内容、作成頻度を定義します。構成管理の最善策ITIL による構成管理の定義に初めて接した場合、運用スタッフは、通常、肯定的な反応を示します。コンセプトに刺激を受け、プロセスの早急な導入に前向きとなります。しかし、実際に環境の分析に着手し、厳密な制御下で CI に代表される膨大な事象の追跡管理が必要なことがわかってくると、最初の熱意は急速に萎えていきます。そうなると、プロセスが複雑すぎると言って、プロジェクト自体が延期されかねません。すべての CI を個別に記録し、一から追跡しなければならないと見なすなら、それも必然的な結果と言えるでしょう。このような無謀な管理方法は失敗に帰着します。しかし、経験豊富な IT スタッフであれば、落とし穴の存在を知っているので、障害を未然に回避することができます。これまで、データ センター環境は重厚長大で、複数の所在地にまたがる結果、総体として錯綜した体制に陥りがちでした。なんと言っても、使用する CI の数が多すぎ、記録、追跡、制御はすべて至難の技です。ただ、限定された小さな環境から始める創立間もない企業の場合は事情が異なるかもしれません。そこで重要なのは適切な構成管理計画です。計画が適切であれば、初めてのプロセスの実装作業はスタッフのトラウマとならず、価値ある経験になります。いったんプロセスが導入されれば、改良を重ね、徐々に堅牢で有益なプロセスに拡張していくための基盤となります。以下に、構成管理の計画に際して重要なコンセプトと最善の方法をいくつか示します。ターゲット環境を明確に定義するIT 環境の 2 つの柱は、開発環境と稼動環境です。運用チームは当初、両方の環境に共通の構成管理と CMDB を導入したいと考えるでしょう。一見正しい目標に見えますが、構成管理の方法を学び始めたばかりの IT 組織にとっては危険な考え方です。2 つの環境は非常に性格が異なるからです。どちらも独自のニーズを抱えています。たとえば、ソフトウェアの開発が最も端的な例です。開発環境という名前が示すとおり、開発作業はすべて開発環境で完結し、稼動環境とは無関係です。開発中のソフトウェアには用途の異なる多くのモジュールやパッチがあり、すべて記録、追跡管理、制御の対象となります。大部分の IT 組織では、多数の開発者がさまざまなプログラムの開発に携わります。開発ツールは市販のものが多数販売されています。実績豊富な組織であれば、使い慣れたツールが存在するはずです。このような既存の開発プロセス上に、ITIL ベースの構成管理を導入すれば、ただでさえ複雑なアクティビティが余計に入り組んでしまいます。以上を考慮すると、運用チームは計画初期の段階で、構成管理の導入範囲を稼動環境に限定し、ソフトウェア開発環境では独自の管理プロセスを採用する必要があります。この決定は、ソフトウェア開発を完全に無視するという意味ではありません。開発を無視した稼動環境は存在しないからです。導入先を稼動環境に限定したら、構成管理の責任者 (構成マネージャ) は、開発側と協議して、CMDB で CI として 管理するソフトウェアとその管理方法を決定します。たとえば、個々のソフトウェア モジュールは CMDB で追跡管理するのではなく、相互に関連するモジュールを "リリース" として括り、リリース番号やタイトルで一括管理します。これにより、ソフトウェアという重要な追跡管理対象要素の構成管理を簡略化できます。また、開発側が構成マネージャの関与を邪魔に思うことによる社内的な政治紛争を回避できます。構成管理の目的は、社内に亀裂を作ることなく開発と営業の協力関係を強化することです。したがって、構成管理の計画アクティビティを大きく発展させるための最善策とは、構成管理の対象となるターゲット環境を的確に定義し、その情報を関連部署にくまなく伝達することです。サービスベースで CMDB を実装する稼動環境が大規模な場合、はじめからすべての情報をカバーする CI を管理するのではなく、まずは与えられたリソース内で実現可能な範囲を CMDB 化するのが理想です。こうすれば、IT 部門が既にサービス管理の実装を決定している場合、つまりサービス レベル管理 (SLM) プロセスの導入が計画/実現されている場合の構成管理の実装が容易になります。SLM プロセスの要はサービス レベル契約 (SLA) です。SLA には、契約対象のサービスごとに、そのサービスを構成するサービス コンポーネントを規定する必要があります。これによって、組織の IT 部門と顧客の双方が、個々のサービスで提供される内容をよく理解できます。また、SLA はサービスにかかるコストや価格を算定するうえでも不可欠です。運用チームでは、SLA 情報を基に、各サービスに対して CI リスト (サービス コンポーネント) を作成します。そして、CI リストを前提に、サービス ベースで構成管理を実装する意思決定が可能となります。たとえば、SLA に規定されたサービスに "SAP 会計" サービスがあり、関連する CI の管理責任が運用チームにある場合、このサービスを構成するコンポーネントはすべて出揃っています。これらのコンポーネントには、専用のファイル サーバーやデータベース サーバー、各種ネットワーク コンポーネント、SAP アプリケーション モジュール、クライアント PC などが含まれます。SAP 会計は基幹業務サービスであり、SAP 環境は明確に定義されていることが多いことを考えると、初めて構成管理の導入を試みるときにはこれを手始めにするとよいかもしれません。運用チームばかりではなく、顧客の側でも、即座に構成管理の価値を実感できるからです。実感できる価値とは次のように言い換えられます。顧客側のメリットは、関連プロセスの質的改善です。顧客が自在に SAP CI データを利用できれば、サービス デスク、インシデント管理、問題管理、変更管理などのプロセスの利用価値が大幅に増すからです。運用チームにも、スタッフが運用経験を積むことができるというメリットがあります。有限で明確な定義を持つ CI セットで構成管理の練習を重ねることは、担当者にとって価値ある経験です。さらに、顧客にとって重要な基幹業務サービスに注力することは、顧客満足度の向上にもつながります。このように、まず単一の基幹業務サービスを対象とした構成管理を成功させれば、この重要性の高い IT プロセスを自信をもってほかのサービスにも拡大し、CMDB を拡充していくことができます。メモ サービス ベースの導入アプローチは、IT 部門で SLM を実装していない場合でも利用できますが、サービス コンポーネントの規定作業にはそれだけ労力がかかります。ドメインベースで CMDB を実装するもう 1 つの実際的な構成管理アプローチは、稼動環境をドメインとサブドメインに分割し、ドメイン単位で CMDB を構築していく方法です。ドメインは、IT 部門やその環境に応じた基準をベースに自由に定義できます。たとえば、ネットワーク全体、1 つのネットワークのセグメント、コンピュータ システムのクラスなどを基準として、CI をグループ化することができます。また、所在地を基準にドメインを定義し、所在地単位で CMDB を構築する方法もあります。大学であれば、構内の建物ごとにドメインを定義したり、大企業であれば、事業所や営業所ごとにドメインを構成したりできます。ここで非常に重要なポイントは、運用チームが環境内において、自分の組織にふさわしい基準を選び、明確にドメインを定義することです。また、コストや労力に合った見返りが得られるように配慮しなければなりません。入念な分析を基に実効性の高いドメインを選択すれば、スムーズに構成管理の実装に進むことができます。CI の詳細さを適切に設定するCMDB で管理する CI の仕様を決めるときは、慎重な検討が必要です。たとえば、Windows 2000 ファイル サーバーを親の CI として定義した場合、子 CI には追跡管理が必要なコンポーネントだけを定義する必要があります。この場合、ハードウェア カードやソフトウェア モジュールをすべて管理するのか、また中枢部品を逐一個別に管理するのか、といった決定が重要です。計画当初は、すべての CI を追跡管理しなければならないと考えるかもしれません。それも一理ありますが、CMDB における管理労力を考えてみれば、実現可能な詳細さには限界があります。小さな組織の稼動環境なら、すべてのコンポーネントを CI 化しても問題にはなりません。しかし、何百台ものサーバーを抱える大規模な環境では、管理に膨大な手間がかかり、想像するだけでも悪夢と言えます。構成管理の価値は、ひとえに CMDB で管理するデータの質と精度で決まります。管理する CI を詳細に設定しすぎて運用チームの手に余るようでは、データの整合性が犠牲になる可能性が大きくなります。CMDB の信頼性が薄れれば、関係するプロセス (サービス デスク、変更管理、インシデント管理など) に与える影響も深刻です。ツールでプロセスを自動化する複数の機能にまたがるプロセス (変更管理など) のなかには、プロセスの実装に使用するツールやテクノロジを考慮せずに設計できるものもあります。その場合、設計終了時点で解析を行えば、プロセスのなかでツールによって自動化できる部分を即座に決定できます。この意味で、プロセスがツールを支配します。つまり、プロセス固有のニーズに基づいて設計を行い、その後、ツールを選択します。単機能のプロセスの場合は、アプローチが変わります。反対にツールがプロセスを支配することになります。構成管理とはそのようなプロセスです。この場合、プロセスに利用可能なツールが複雑な設計に対応しきれないのであれば、時間をかけて非常に細かなプロセスを設計してもあまり意味はありません。構成管理の計画段階では、市販の ITIL 対応構成管理ツールについて知っておく必要があります。ツールの中には、必要機能が完備されてすぐに使える状態のものもあれば、相当量の開発が必要なものもあります。どちらにも存在理由があり、それぞれ異なる要件に対応しています。追加の開発を行うかどうかを決めるのは運用チームです。アプローチを決定したら、ITIL 構成管理に詳しいスタッフが、各製品の特徴を比較します。ツールの機能や特徴を知ることで、環境に適した構成管理と、そこで使用するツールの両方を視野に入れた設計作業に入ることができます。また、ツールの能力を超えた機能を盛り込むような無駄な労力を省けるので、プロセスの設計が大幅に単純化します。まとめ構成管理は真の価値を生む、非常に重要度の高いシステム運用プロセスです。このため運用チームには、プロセスの設計/実装を慎重に行うことが求められます。これ以降の記述内容は、常に上述のコンセプトや最善の方法を念頭に置きながら読み進んでください。スコープと目的の定義構成管理計画の策定における最初のステップは、構成管理のスコープと直接的な目的を定義し、最終的に目指すビジネス目標を決定することです。目標としては、短期的目標と長期的目標の両方を掲げるべきです。スコープと目的を明確に理解すれば、構成管理スタッフはそれをガイドラインとして、各自の担当業務を遂行していくことができるからです。構成管理は、あらゆる IT インフラストラクチャ システム/機器に適用できます。その役割は、IT 環境を構成するすべてのコンポーネントを識別/制御/追跡管理することです。これらを遂行するには、構成管理とほかの各種プロセスを連携させる必要があります。この点の詳細については、「ほかのプロセスとの関係」を参照してください。組織で構成管理の効果を十分に活用するための要件は以下の通りです。•IT 環境内のすべての CI を特定し、それぞれに識別子を付ける。•システムのライフ サイクルを通じて CI への変更をすべて制御し、追跡管理する。•IT 環境での変更はすべて文書化し、変更管理とリリース管理の両プロセスと矛盾を来さないようにする。•ベースラインとなる構成を規定し、維持する。•サービス デスク、変更管理、インシデント管理、リリース管理などのプロセスから要請があった場合、正確な CI とその関連ドキュメント情報を提供する。•インシデントや問題が発生した場合は該当する CI を特定し、サービス デスク、インシデント管理、問題管理の各プロセスを支援する。•組織の現有資産を把握することで、資産の管理を行う。•使用許可のあるソフトウェアのコピーのみが IT 環境内で利用されるように、ソフトウェア ライセンスを管理する。•監査を行い、IT 環境の実際の状況と CMDB の登録内容の一致を確認する。•変更要求に基づく変更処理プロセスと承認済み CI のみを使用する重要性について、組織内の各グループをトレーニングする。•管理職に報告書を提出する。ポリシーと手順構成管理の成否は、プロセスのアクティビティを規定するポリシーと手順の質に依存します。必要な手順としては、CMDB 更新などの構成管理アクティビティ、CMDB の監査や再構築、管理職への報告書の作成などを挙げることができます。構成管理を構成するアクティビティは明確に定義し、文書化する必要があります。文書化したポリシーや手順は、必要な管理職や構成管理スタッフに配布してください。さらに、構成管理、変更管理、リリース管理の間の関係とインタラクションを定義したポリシーと手順も定義します。プロセス間の通信が正しく行われないと、構成管理の目的が果たされません。また、これらのプロセスが関わる変更は、すべて承認したうえで、正しく速やかに CMDB に記録する必要があります。プロセス相互の関係性を適切に規定し、構成管理のアクティビティを成功させるには、適切な計画が必要です。ポリシーには、プロセス相互の連携に関するガイドラインを規定してください。定常的なアクティビティの計画定常的なアクティビティには、管理職への報告書の作成と監査の実施があります。ここでは、これらのアクティビティの実施時期、スタッフへのタスクの割り当てについて概説します。スケジュールの作成とスタッフへのタスクの割り当ては構成マネージャが担当します。ストレージレポジトリとセキュリティ構成管理のデータ管理は、物理的および電子的レポジトリ (CMDB、ドキュメント レポジトリ、リリース管理の主管轄である最終ソフトウェア ライブラリなど) を使用して行います。レポジトリに関しては次の情報を管理する必要があります。•レポジトリ メディアの説明•場所•内容•アクセス権と更新権•最低限必要なエントリ•廃棄の条件レポジトリは安全な場所に設置してください。火災や従業員の不正行為に備えて社外に設置する場合もあります。セキュリティ対策は、セキュリティ管理担当と協議のうえで決めます。特に、CMDB やほかのストレージ レポジトリへのアクセス権やデータ更新権の設定が重要です。トレーニング構成管理のデータ管理は、物理的および電子的レポジトリ (CMDB、ドキュメント レポジトリ、リリース管理の主管轄である最終ソフトウェア ライブラリなど) を使用して行います。レポジトリに関しては次の情報を管理する必要があります。トレーニングは、構成管理計画で重要な位置を占めますので、トレーニング担当者や変更管理担当者と協議のうえで計画してください。特に、変更管理に変更要求を提出する手順については、組織の全員にトレーニングを実施します。最新で正確な情報による CMDB の更新の重要性も強調します。また、承認済みのソフトウェアのみの使用を義務付け、未承認のソフトウェアの使用については、詳細な規定を設けて規律化します。構成管理スタッフにも適切なトレーニングを行う必要があります。構成管理の流れ、CMDB と関連ドキュメント ライブラリの更新手順について、各スタッフに十分な理解を求めてください。正しいトレーニングを受けていないスタッフがいると変更処理の妨げとなります。これは、IT 環境での変更が頻繁な組織では、特に問題となります。また、スタッフがベースライン報告書などの必要書類を準備できないと、変更管理やリリース管理で、構成管理の導入に備え、その影響を正しく評価することができなくなります。また、トレーニングが不十分なスタッフは、サービス デスク、インシデント管理、問題管理の各プロセスにも悪影響を及ぼします。たとえば、CMDB が最新のデータに更新されていない場合、インシデントや問題の調査または修正に支障を来します。トレーニングを計画する際、構成マネージャはトレーニング担当者と協議を重ね、トレーニングの実施形態、コース編成、予定、必要リソースなどを決定します。以下、これらについて概説します。まずトレーニングの実施形態ですが、社内研修、インストラクタによる講義、演習、操作手順ガイダンスなどを組み合わせます。次に、クラスの大きさ、グループ別の編成 (ユーザー クラス、構成管理スタッフ クラス) などのコース編成を決めます。さらにトレーニングの実施予定を関係部署に配布します。そして最後に、インストラクタ、コンピュータ機器、教室、教材などの必要リソースを定義し、調達します。管理職への報告書ここでは、構成管理に必要な報告書の種類とその内容について概説します。報告書は、経営陣、管理職が構成管理の評価に使用する資料です。報告書は、構成管理以外のグループが IT の変更やインシデントまたは問題の解決に役立てる場合もあります。次の報告書が揃っていると便利です。•ベースライン報告書•監査報告書•CI ステータス報告書•ソフトウェア ライセンス ステータス報告書•CMDB/ドキュメント ライブラリ問題報告書•CMDB 変更率に関する報告書ベースライン報告書と監査報告書は、リリース管理と変更管理の各グループで IT 環境への変更計画を立てる際に役立つ資料です。前述のように、これらのドキュメントによって、全部署における運用業務の開始ポイントと、変更を実施した場合の影響を評価するポイントが明確になります。変更率に関する報告書は、経営陣が組織内での変更量に関する現況と見通しを立てる際に有用です。変更過多の場合、変更管理で問題が生じやすくなります。これらの報告書は組織の実状、特にインシデントや問題の傾向を評価するためにも有用です。構成の識別構成識別アクティビティでは、次の図に示すように、IT コンポーネントの選定、識別、ラベル付けなどを行います。図 3: 構成識別タスク構成アイテムの識別構成アイテム (CI) とは、そのライフ サイクル全体を通じて識別、追跡管理、制御される IT コンポーネントのことです。追跡管理の対象となる CI には、次のコンポーネントがあります。•ハードウェア•ソフトウェア•テレフォニー装置•ネットワーク コンポーネント•環境•文書、マニュアル類•変更要求•ベースライン報告書と監査報告書•サービス レベル契約 (SLA)•データベース•ベンダ情報•インシデントおよび問題の記録•ドキュメントライブラリおよびソフトウェア ライブラリ•手順とポリシー社員情報も CI として追跡管理する場合があります。たとえば、組織内の任意のワークステーションの使用許可を得ている社員がいれば、その人の情報を CI として管理します。この場合、あるユーザーが ID とパスワードを入力してシステムにログオンを試みると、CI 属性から、その人に許可されているオペレーティング システム、アプリケーション、アクセス権がシステムに通知され、ログオン制御が行われます。ここからは代表的な CI と、ほかの CI の関係について説明します。ハードウェア CIハードウェア CI は、管理属性によってハードウェア コンポーネントを識別する情報です。たとえば、サーバーをハードウェア CI として管理するとします。その場合、サーバー ID、購入日、バージョン、BIOS、モデル、ファームウェア、シリアル番号などを CI 管理属性となります。また、サーバーに内蔵ハード ディスクがある場合、このハード ディスクを別のハードウェア CI として管理する際には、サーバー CI の子 CI として管理します。ハード ドライブ CI の属性としては、ハードウエア コンポーネント ID、親ハードウェア ID、コンポーネントの種類、インストール日、バージョン、シリアル番号などが考えられます。図 4: ハードウェア CI の例図 5: ソフトウェア CI の例ソフトウェア CIソフトウェア CI では、インベントリ (ファイルとバージョンの一覧)、ビルド スクリプト、インストール スクリプト、設定情報 (.ini ファイル、レジストリ値、各種設定ファイル) などを管理します。ソフトウェア CI の例としては、Microsoft の IIS (インターネット インフォメーション サービス) のビルドに追加した修正プログラムがあります。CI 管理属性としては、このほかに、ソフトウェア CI の ID、ソフトウェアの種類、アプリケーション名、インストール日、バージョン、サービス パック、修正プログラムなどがあります。ネットワーク CIネットワーク CI は、ネットワーク デバイス (ルーターなど) からケーブルの配線にまでのすべてのネットワーク情報を管理します。ネットワーク CI の例としては、ルーターの情報があります。この場合、管理属性には、ハードウェア仕様、インターフェイス カードなどの筐体に含まれる部品のインベントリなどが考えられます。また、ビルド スクリプトや設定スクリプトも属性として管理されます。ユーザー CIユーザー CI は、ユーザーの識別に必要な情報や、そのユーザーに与えられている権限などで構成されます。ユーザー CI の例としては、IIS サーバー クラスタ管理者があります。管理属性としては、ユーザー名、役割、連絡先情報、不在時の代理要員名などが考えられます。CI のスコープと詳細さの設定構成管理において IT 環境の構成コンポーネントの選定と識別を行うには、構成管理プロセスで管理する CI のスコープと詳細さを決定する必要があります。IT 環境にインストール、置換、配置替え、またはアーカイブ可能な CI は、すべて個別の CI として追跡管理します。スコープに関して、構成管理が IT 環境のどのコンポーネントを記録し、追跡管理する責任があるのかを、組織的に決定する必要があります。たとえば、外部に管理を委託するコンポーネントは CMDB で管理しないので CI 化しません。データ ウェアハウスの管理をサードパーティのプロバイダに委託する場合、このウェアハウスのコンポーネントは管理しなくてかまいませんが、このプロバイダの連絡先情報は CI として管理すべきです。図 6: CI の詳細さの決定スコープ以外に、コンポーネントの置換や更新に関して CI の詳細さを規定します。これはポリシーに基づいて決めるのが最も効果的です。CI は管理するレベル数を制限しないと、CMDB で管理不能に陥ります。たとえば、上図の "System 1" がコンピュータだとすれば、そのサブレベルとしてハードディスク、Ethernet カードなどのコンポーネントを管理します。各ボックスが 1 つのコンポーネントに対応し、個別の CI として管理できます。管理対象を詳細にすれば、それだけ構成管理の規模が増大し、コストがかかります。たとえば、日常的にデスクトップ システム全体の入れ替えがある組織の場合、デスクトップのみを CI として管理すれば十分です。しかし、システムのコンポーネント レベルで定期的なアップグレードを実施している組織なら、そのコンポーネントのレベルまで CI として管理すべきです。CI の詳細さは半期または年度ごとに見直し、CMDB の内容を IT 環境と業務全般のニーズに符合させます。メモ CMDB に記録する CI のレベルは、変更が実施されるレベルと一致させることが大原則です。CI の標準的名前付け規則の定義個々の CI は、一意の名前、モデル番号、シリアル番号、バージョン番号などによって一意に識別される必要があります。バージョン番号を含めるのは、同一の CI に複数のバージョンが IT 環境内に存在する可能性があり、バージョン番号がないと完全には一意にならないからです。構成識別アクティビティの一環として、標準的な名前付け規則を定義し、IT 環境内で追跡管理する CI のすべてに適用します。CI カテゴリを明示するために、接頭語を ID の一部として使用すると便利です。CI カテゴリの例を次の表に示します。表 3 CI カテゴリの例ハードウェアソフトウェア文書類lp ラップトップos オペレーティング システムag 管理者ガイドce 通信機器as アプリケーション ソフトウェアrm リファレンス マニュアルpc パーソナル コンピュータac アプリケーション コードum ユーザー マニュアルws Web サーバーvs ベンダー ソフトウェアsl ソフトウェア ライセンスsq SQL Serverav アンチウイルス ソフトウェアpr 問題pr プリンタ ic インシデントsc スキャナ pd 手順hb ハブ pt ポート rt ルーター たとえば、複数のデータ センターにまたがる e コマース サイトの場合、ハードウェア CI には、次のような名前付けを行います。DDAATTNN各部には次の値が入ります。DD = データ センター IDAA = アプリケーション IDTT = サーバー タイプ ID (Web サーバーの場合 ws)NN = 一意の識別子 (01、02、03、…)CI 属性の決定属性とは、CMDB に記録する個々の CI が持つ特性です。CI の種類が違えば、管理する属性も異なります。構成識別アクティビティの一環として、構成マネージャは組織にとって重要な、管理すべき属性を決定する必要があります。ソフトウェア CI やハードウェア CI は、次のような類似した属性によって管理されます。•一意の ID と CI 名•バージョン•説明•製造元と、シリアル番号またはモデル番号•購入日•インストール日•購入価格•設置場所•ステータス•構成 (CPU、サーバーなど)•担当グループ (または所有者)•関連リリース - インストール日、変更要求番号•関連するインシデントおよび問題報告書•他の CI との関係さらに多くの属性を持たせた方が、CMDB の有用性が増すように思われるかもしれません。しかし、管理する情報が増えれば増えるほど、CMDB の維持コストも増えます。したがって、構成マネージャは、あくまでも業務要求と関係グループへの便宜性を念頭に置いて、管理する属性を決定してください。たとえば、CI の所有者を管理していれば、インシデント管理および問題管理の担当者が、その所有者に問い合わせを行うことができます。変更管理と可用性管理のマネージャなら、同じ情報を参照し、これから行う変更やメンテナンス作業に関して所有者に通知することができます。また、管理対象コンポーネントのリリース、ステータス、インシデントおよび問題報告書を記録しておけば、CI のライフ サイクル全体を通じた履歴を管理することができます。バリアントの定義バリアントとは、バージョンが異なるだけなど、お互いによく似通った CI のことです。同じ CI に複数のバージョンがある場合は、バージョンごとに異なる CI として管理することも、バージョン番号属性のみが異なる同一の CI (バリアント) として管理することもできます。バリアントは、頻繁にアップグレードされるコンポーネントを同一の CI で管理したいときなどに便利です。異なる CI を作成する方がバリアントを使用するより簡単ですが、バリアントは、特定のコンポーネントにおいてバージョンの更新が必要な場合、または特定のバージョンがシステム障害を引き起こす場合などに効果を発揮します。たとえば、バリアントを持つ CI をアップグレードすると、それに伴いすべてのバリアントが即座にアップグレードされます。また、ある CI に問題が発生した場合、そのバリアントをすべて修正することで、問題が繰り返し発生するのを防ぐことができます。バリアントを使用すると、記録および追跡管理対象の CI 数が減り、CMDB の維持コストが低減する効果があります。CI 間の関係の定義構成識別アクティビティには、CI の相互関係を記録することも含まれます。CI 間の関係を記録することは、前提とされている相互依存関係の理解に役立ちます。関係は CI の属性の 1 つとして管理できます。CI 間には次のような関係が考えられます。•使用 (ある CI が別の CI を使用していることを表す。たとえば、ソフトウェア アプリケーションがサーバ上で稼動。)•接続 (CI どうしが接続されていることを表す。たとえば、パーソナル コンピュータとプリンタが接続されている状態。)•構成要素 (ある CI が別の CI の構成要素であることを表す。たとえば、モニタはコンピュータ システムの構成要素。)前述のように、CMDB は関係情報を管理できる点で、スプレッドシートとは異なります。関係情報の管理は、環境内で CI どうしが依存関係にあることを意味します。このことから、CMDB は適切に管理すれば強力なツールとなることがわかります。また、CI 相互の関係を文書化しておけば、特定の CI にインシデントや問題が発生したとき、またはその CI が変更されたとき、ほかにどのような影響を与えるかを把握できます。この点でも、適切に管理された CMDB 関係情報は有用です。組織内の各グループで関係情報を活用すれば、影響評価や問題解決をはじめとして、さまざまな作業が容易になるからです。たとえば問題管理では、関係情報によって、問題の根本原因を突き止め、ほかの CI が受けている影響を把握できます。変更管理でも同様に、IT 環境へのリリースの導入によって影響を受ける CI を判断できます。CI 関係情報を定義する際は、ソフトウェア ライセンスを供与されているサーバー、デスクトップ、ラップトップなどを把握するために、必ずソフトウェア CI とハードウェア CI を関係付けます。これによって構成管理において、使用中のソフトウェア ライセンス数が契約内容と一致していることが確認できます。また、IT 環境内で使用許可のあるソフトウェアのみが使用されていることも簡単に確認できます。たとえば、10 台の PC で構成されるクラスタに、特定のアプリケーションの使用許可が与えられているとします。 この場合、次の例のように 13 個の CI を定義します。•各 PC 用の CI を 10 個•クラスタ用の CI を 1 個•ライセンス用の CI を 1 個•アプリケーション用の CI を 1 個PC はクラスタに関係付け、クラスタはライセンスに関係付けます。また、ライセンスはアプリケーションにも関係づけます。その結果、このアプリケーションを実行可能な PC が特定され、使用許可のあることも保証されます。CI には変更要求やインシデントおよび問題報告書も関係情報として持たせることが重要です。変更要求情報が記録されていれば、変更に関係するコンポーネントを検索し、追跡管理することができます。その結果、変更中または変更後に問題が発生した場合の解決が容易になります。サービス デスクなどのグループでは、インシデントおよび問題報告書から CI を見つけ、即座に問い合わせてきたユーザーに問題の内容や詳細 (たとえば、影響を受けている他の CI は何かなど) を提供できます。この情報は、インシデント管理および問題管理による現状分析、問題の根本原因の究明、早期解決などを容易にします。次に CMDB スキーマの例を示します。図 7: CMDB スキーマの例これはあくまでもサンプルです。実際の組織が CMDB で追跡管理する情報がすべて含まれているとは限りません。たとえば、サンプルのスキーマにはインシデントと問題の記録、SLA、手順などが含まれていません。このスキーマは、リレーショナル データベースで管理できる基本関係情報と依存関係情報を例示することで、CMDB のパワーの一端を表しているだけです。上図のスキーマ例に含まれているテーブルについて、次に簡単に説明します。•tblSystem Components このテーブルは、システム (この場合は Web サーバー) の組織内での機能を説明したものです。システムが使用するハードウェアおよびソフトウェア コンポーネントのリストも含まれています。•tblHardware Components このテーブルは各ハードウェア コンポーネントの詳細情報です。•tblSoftware Components このテーブルは各ソフトウェア コンポーネントの詳細情報です。•tblDocument Components このテーブルは関連するドキュメント コンポーネントの詳細情報です。•tblDriver Components このテーブルはハードウェア ドライバの詳細情報です。•tblVendor Information このテーブルは関連するベンダについての情報です。•tblRequest For Change このテーブルはすべての関連変更要求についての詳細情報です。•tblEmployee Information このテーブルは社員のオンサイト情報です。•tblEmployee Role Information このテーブルは社員の役割についての情報です。CI のラベル付け構成識別アクティビティの一環として、IT 環境のすべての CI は、すべて物理的な手段 (たとえば、バーコード) でマーキングし、構成の識別と検証および監査を容易にします。最終ソフトウェア ライブラリ内にあるソフトウェアのマスタ コピーには、ソース コードの先頭に CI 名とバージョン番号を記入します。CI に関するドキュメントの識別情報も正確に記録します。前述のとおり、各 CI には固有の ID を割り当てます。ソフトウェア、ハードウェア、ルータなどのカテゴリで CI の種類を分ければ、簡単にコンポーネントを識別できます。ベースラインの文書化構成識別アクティビティの一環として、構成管理スタッフは IT 環境のベースラインを定義します。ここではベースラインを文書化します。ベースラインとは、特定の時点における静止した状態の IT 環境を表す情報で、これによって基準となる環境の構造と、構造を規定するコンポーネント間の依存関係を定義します。特定の時点における IT 環境の見取図とも考えられます。ベースラインは通常、IT 環境の標準を定めるもので、これを基準としてその後の環境を設計および制御します。ベースライン報告書は、変更の影響を受ける CI や、変更のサポートに必要なアップグレードの特定 (たとえば影響評価) にも使用します。変更要求の妥当性を判断する際、CAB (変更諮問委員会) では、IT 環境への影響がわからないと、申請を許可できません。そのため、構成管理から CAB にベースライン報告書を提出します。この報告書では、基準となる環境の構造について詳述し、CAB はこれに基づいて変更による環境への影響を評価し、決定を下します。また、導入された変更が問題を発生させた場合、ベースラインによって復帰すべきポイントがわかります。変更の実装によってベースラインに加えられた変更は、すべて CMDB に記録されます。この作業には、新しい CI の登録、既存 CI のアーカイブ化、配置替え、アップグレードなどが含まれます。構成の制御構成制御アクティビティでは、CMDB において、適切な手順とポリシーに従って CI の追加、変更、削除、および閲覧が行われていることを確認します。これは IT 環境における変更の制御とは違います。IT 環境における変更の制御は、変更管理アクティビティの管轄です。この詳細については、『MOF 運用ガイド』の「変更管理運用ガイド」を参照してください。構成制御アクティビティでは次の作業を行います。•CMDB への新規 CI の追加•CMDB の CI ステータス更新•IT 環境から削除された CI のアーカイブ保存と、それに応じた CMDB の更新•ソフトウェア ライセンスの管理•CMDB、ソフトウェアおよびドキュメント ライブラリのセキュリティ確保•CMDB データのバックアップCMDB への新規 CI の追加構成を効率的に制御するには、変更管理と構成管理を緊密に連携させる必要があります。変更管理は、IT 環境全体での変更を制御する役割があるため、構成管理と連携して、変更による影響を評価します。また、両者の連携は、正式に許可された変更のみが実装され、正しく CMDB に記録されていること、その結果 CMDB 内の CI が正しく制御されていることも確認しています。下図は、CMDB における新規 CI の追加手順を表しています。図 8: CMDB における新規 CI 情報の追加変更管理が変更要求を受け付けると、IT 環境に関するベースライン報告書を参照して、環境への影響が評価されます。変更要求が承認されれば、変更管理から構成管理スタッフに対して新規 CI を記述したフォームが提出されます。構成管理スタッフはこの情報を CMDB に登録します。次ページの新規 CI フォームのサンプルに、提出が義務付けられている情報を示します。構成管理スタッフには、インシデント管理および問題管理から CMDB に反映すべきインシデントおよび問題を記述したフォームが提出されます (インシデントも問題も、1 件ずつ固有の CI として追跡管理されます)。フォームに記載する情報には、インシデントおよび問題の説明、影響を受けるユーザー数と CI などがあります。インシデントおよび問題フォームのサンプルも後続のページに示します。多くの組織で構成管理プロセスの導入が困難を極めるのは、管理しようとする CI の種類が多すぎるためです。導入は段階的に進め、その都度ミスから学びながら、変更管理プロセスの制御下にある全 CI の CMDB 登録を目指してください。段階的アプローチを採用すれば、IT 部門ではプロセス導入に必要以上のプレッシャーを感じなくて済みます。新規 CI 情報フォーム図 9: 新規 CI 情報フォームのサンプルインシデントおよび問題フォーム図 10: インシデント/問題フォームのサンプル既存 CI のステータス更新図 11: CMDB における CI 情報の更新CI ステータスの変更は、CMDB に記録してデータベース情報の精度を確保します。組織内では多数のグループが CMDB 情報を利用してアクティビティの効率化を進めています。そのため、誤ったステータス情報は深刻な問題につながる恐れがあります。たとえば、変更管理グループがベースライン報告書を基に CI 変更による IT 環境への影響を評価するとき、間違った CI ステータス情報は、環境の現状を間違って伝え、当然、変更の与える影響も不正確なものとなります。次の図は、全 CI ステータス情報の流れを示しています。リリース管理からは、最終ソフトウェア ライブラリからの出入りに伴うソフトウェア CI ステータス変更、可用性管理からは、定常的なメンテナンスの CI のステータス変更が変更管理に通知されます。変更管理で承認されたステータス変更情報は、最後に構成管理に渡されます。次に、CI ステータス変更フォームのサンプルを示します。CI ステータスの例 :•計画済み•開発中•開発済み•テスト中•テスト済み•実装中•実装済み•メンテナンス中•アーカイブ済みなお、インシデントおよび問題 CI への変更は、直接構成管理に渡されます。どちらの場合も、受け付けられた情報は即座に CMDB に記録されます。CI ステータス変更フォーム図 12: CI ステータス変更フォームのサンプルCI のアーカイブ保存と CMDB の更新ソフトウェアのアップグレードとハードウェアの新しい製品への置き換えが行われた場合、旧バージョンのコンポーネントは IT 環境から除外し、対応する CI ステータスを CMDB に反映させます。通常、CI の廃棄は、このような IT システムのアップグレードによって起こります。このとき、廃棄するコンポーネントの CI ステータス変更を詳述した CI ステータス変更フォームが、変更管理から構成管理に提出されます (下図参照)。図 13: CMDB における CI 情報の更新とアーカイブ保存また、変更要求に関係なく環境から CI が削除された場合も、変更管理からステータス変更フォームが提出されます。たとえば、組織の部門で現在サブネットワークで使用しているカラー プリンタが不要になった場合が、これに相当します。部門では、プリンタの処分と変更管理への通知を担当するシステム管理グループに連絡します。そして通知を受けた変更管理から構成管理にステータス変更フォームが提出されます。ソフトウェアライセンスの管理ソフトウェア ライセンスの監視と管理にも CMDB を使用します。この場合、構成管理プロセスは、組織が契約条項を遵守していること、何らかの問題が発生したときは管理職に通知する役割を果たします。組織または執行役員に対する法律上の責任問題につながりかねないので、ソフトウェアの不正使用は厳重に監視します。ベンダからソフトウェアを購入したとき、ソフトウェア ライセンスはセキュリティで保護されたドキュメント ライブラリなど、安全な場所に保管してください。ソフトウェア ライセンスの記載情報は、ソフトウェア CI の属性として管理することが必要です。具体的には次のような情報を管理します。•CI カテゴリ•CI 番号•製造元•シリアル番号•バージョン番号•購入日•有効期限•ライセンス更新日•配布可能コピー数ソフトウェアの新規購入、追加ライセンスの購入、ソフトウェアのアーカイブ化を行ったら CMDB を更新します。ライセンス情報を適切に文書化することで、IT 環境で使用されているソフトウェアがすべてライセンス許可されていることを容易に確認できるようになります。ライセンス情報は、該当グループへの料金請求や、追加ライセンスの購入要請にも利用できます。この情報は不正使用の監視やライセンス情報の保守だけでなく、組織全体での無駄なライセンス購入防止にも役立ちます。大組織では、これだけでも大幅なコスト削減が期待できる場合があります。構成管理グループでは、当事者の部門から要請された場合、ライセンス情報を提供します。ソフトウェアライセンス管理タスクライセンス関連の構成管理の役割をまとめれば、次のようになります。•ソフトウェア ライセンスの要求•ライセンスの認可と割り当て•ライセンスの追跡管理変更要求が承認されれば、変更管理から、新規ユーザー アカウントの設定、業務機能の拡張、新規ソフトウェア導入を目的としてソフトウェア ライセンスを要求できます。このとき、システム管理グループでも、新規ユーザー アカウントの設定など変更管理の承認が必要な作業を除き、グループに権限がある標準的な変更に関してソフトウェア ライセンスを要求することができます。詳細については、『MOF 運用ガイド』の「変更管理運用ガイド」を参照してください。前の図に示したように、すべての要求は構成管理グループに提出されます。構成管理では、要求されたソフトウェアの使用ライセンスが組織にあること、そして要求数のライセンスを提供できることを確認します。また、構成管理スタッフは、ソフトウェア要求フォームに必要な情報が記載されるていることを確認します。情報が間違っていたり、不足していたりする場合は、申請者に差し戻します。ソフトウェアが IT 環境で使用されている標準的なアプリケーションでない場合、またはライセンス数が足りない場合、構成管理と要求グループの連名で、購買グループに必要なライセンスの購入を要請します。追加ライセンスが取得され、CMDB に記録された時点で、ソフトウェアのインストールを開始できます。要求されたライセンスが使用可能な場合は、ソフトウェアのインストール許可と共に申請者に要求を返します。通常、インストール許可は、最終ソフトウェア ライブラリの管理を担当するリリース管理グループに与えられます。最終ソフトウェア ライブラリにはすべてのソフトウェアのマスタ コピーが保管されています。インストール完了後、構成管理グループがライセンスのステータスを更新します。ソフトウェア申請者は、フォームの先頭セクションに必要事項を記入して構成管理に渡します。構成管理でフォームの内容を検討後、ライセンスが使用可能な場合は、申請者にフォームを戻します。それ以外の場合は、ソフトウェア購買グループに要求を転送します。最後に、申請者はフォームの 3 番目のセクションに、アプリケーションのインストール先プラットフォームを記入します。そしてフォームを構成管理に送り返し、CMDB を更新してもらいます。以下にソフトウェア要求フォームのサンプルを示します。ソフトウェア要求フォーム手順 1. このセクションは申請者が記入します。申請日 : ____/____/____使用場所 :  申請者名 :_____________________電話番号 :内線 : ________  ソフトウェア製造元 :_________________________________________________   製品名 :_________________________________________________   バージョン :シリアル番号 : ______________________  必要コピー数 : _____________   インストール先ハードウェア プラットフォーム :   名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________手順 2. このセクションは構成管理スタッフが記入します。担当者 : __________________________日付 : ____/____/____ 要求されているのは標準ソフトウェアである。 :はいいいえ (購買グループへ転送)受給可能ライセンス数 : _____________ライセンス番号 : __________________ 手順 3. このセクションは導入担当者が記入します。導入日 : ____/____/____担当者名 :  電話番号 :内線 : _______   インストール先ハードウェア プラットフォーム :   名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________名前 :_____________CI 番号 : __________手順 4. このセクションは構成管理スタッフが記入します。CMDB 登録担当者 : ____________________日付 : ____/____/____図 15 ソフトウェア要求フォームの例セキュリティセキュリティは構成制御において重要な位置を占めます。データベースとライブラリに対するセキュリティ ポリシーは、セキュリティ グループが計画します。ライブラリからデータを取得し、CMDB を変更する権限は、構成管理スタッフだけに与えます。CMDB 内にあるジョブに直接関係する情報の更新権も、構成管理スタッフのみに与えます。データベース アーキテクチャの変更権限は、構成マネージャと、マネージャが任命した変更実施者のみに与えます。CMDB に対するアクセス制御を確立すれば、正式許可数を超えるライセンス使用などの不正アクションを防止できます。CMDB データのバックアップCMDB の定期的なバックアップは非常に重要な作業です。作成したバックアップは火災や盗難の恐れのない、安全な場所に隔離して保管します。バックアップの頻度は、IT 環境に行われる変更の量と頻度によって異なります。毎日大量に CMDB を変更する組織なら、毎週、場合によっては毎日バックアップを作成してください。CDMB は、重大な障害からの復旧手段として緊急事態対策の筆頭に数えられるものです。CDMB のバックアップは、万一のシステム障害に備えて作成しておくことが大切です。構成ステータスアカウンティング構成ステータス アカウンティング アクティビティは、ライフ サイクル全体を通じて個々の CI の現在および過去の履歴を報告書にまとめる作業です。報告書には以下の情報を含めます。•CI を一意に識別する ID•関連の変更要求とインシデント/問題報告書•監査報告の結果•ステータス変更履歴•CI の所有者この情報を使用して、ベースライン報告書と管理職への報告書を作成できます。 ベースライン報告書は、変更管理に IT 環境の現在の状態に関する情報を提供し、これを利用して環境への影響が評価されます。このほかにも、組織内での変更量、特定の CI の変更率などを盛り込んだ報告書を作成できます。これを利用して、将来的な問題を未然に防ぐことができます。 通常、報告書は月次で作成しますが、大がかりな変更が頻繁に行われる環境では、それより頻繁に作成することもあります。構成の検証および監査構成の検証および監査のアクティビティは、ハードウェア、ソフトウェア、ドキュメント、手順、SLA などの CI をすべて物理的にチェックする作業です。 監査では、CMDB 内の CI の内容が実際の物理環境のコンポーネントと一致していることを確認します。 また、監視には、最終ソフトウェア ライブラリなど、組織にあるセキュリティ保護されたドキュメント ライブラリの内容の確認や、IT 環境でライセンス許可のあるソフトウェア コンポーネントと手順のみが利用されていることの確認も含まれます。さらに、承認済みの CI すべてに対応する変更要求が記録されているかどうかも確認の対象です。つまり監査とは、CMDB に最新の情報が反映され、信頼性の高い情報源として機能していることを検証する作業です。監査は定期的 (たとえば半年に 1 度)に実施すると共に、抜き打ちでも実施し、ライセンス許可のあるソフトウェアの使用に関して組織が定めた基準が守られているか、また、CI の盗難が発生していないかどうかを確認します。抜き打ち監査では 、IT 環境の一部を検査するだけでもかまいませんが、定期監査では IT 環境全体を検査します。 実際の監査は、構成管理マネージャの指揮下において構成管理スタッフが実施します。監査の実施タイミングは次のように規定できます。•定期 (CMDB 内容の変更量に応じて四半期に 1 度、または半期に 1 度)•不定期•主要な変更の前•未登録 CI 発見時•壊滅的な障害の発生時許可されていない CI が見つかった場合は、担当の管理職に通知します。このとき、一般的な対応措置としては再トレーニングで十分ですが、必要と認められる場合は懲罰を課します。たとえば、違法ソフトウェアを発見した場合は、ソフトウェアを削除し、再トレーニングで当事者に、不正ソフトウェアの使用の違法性、その人や組織全体への影響について再教育します。検証および監査のアクティビティの推移を下図に示します。図 16: 検証および監査のアクティビティ監査の準備を行う際、構成管理マネージャはスタッフに、デスクトップ、サーバー、プリンタなど担当を割り当て、監査の実施方法を決定します。小さな組織では、CMDB テーブルを印刷し、テーブルのデータと実際の IT コンポーネントを照合すれば十分でしょう。しかし、大きな組織ではこの方法は不十分なため、スキャナを使用して各コンポーネントのバーコードを記録し、そのデータをダウンロードして CMDB の内容と照合します。どちらの場合でも、バーコードのないコンポーネントはドキュメントに記録し、監査タスク終了後に調査してください。CMDB 内のデータの整合性を保証するには、監査結果と実際の CMDB 内容の比較が必要です。人的ミス防止のため、この作業は自動プロセスで処理します。その結果、矛盾が見つかれば報告書に記載します。構成管理スタッフは個々の矛盾を調査し、原因が構成管理グループの内部的なエラーなのか、外部的なエラーなのかを突き止める必要があります。たとえば、内部的なエラーは、構成管理プロセスに提出された変更要求に対する CI が正しくログに記録されていない場合などに発生します。内部的な問題を解決するには、スタッフの実施した作業を調べ、問題の再発防止にプロセスの再構築が必要かどうかを判断します。必要があれば、トレーニングを実施して作業手順の徹底を図ります。外部的な問題は、ユーザーが使用許可のないソフトウェアをダウンロードした場合や、未承認のハードウェアを使用した場合に発生します。そのような場合はシステム管理グループに報告して問題を解決してもらい、結果を構成管理グループに報告させます。構成管理スタッフは監査の最後に監査報告書を作成し、監査の結果、および矛盾が見つかった場合はその矛盾と対応措置を記録に残します。報告書は経営幹部と IT マネージャに提出し、彼らが IT コンポーネントの無許可使用と対応措置について十分な認識を得られるようにします。Windows 2000 の監査機能Windows 2000 の WMI (Windows Management Instrumentation) を使用すると、IT 環境の監査が容易になります。WMI は、IT 環境の運用と管理のコストの低減を目的に開発された、スケーラブルな管理インフラストラクチャです。WMI ベースの管理アプリケーションを作成すれば、大量の情報を収集できるようになります。収集した情報を CMDB 内のデータと比較することで、データベース内の CI と物理環境の対応コンポーネントとの整合性をチェックできます。CMDB に関しては次の機能を果たすスクリプトを記述することができます。•クライアント コンピュータに現在インストールされているアプリケーションの一覧•ネットワーク リソースの一覧•コンピュータ システム、周辺デバイス、およびファイル システムに関する情報WMI スクリプトは次の各言語に対応しています。•Microsoft Visual Basic•Visual Basic for Applications•VBScript•Microsoft JScript•PerlWBEM の概要WBEM (Web-based Enterprise Management) は、エンタープライズ ネットワークでの情報アクセスおよび共有方法を、共通の規格で標準化するための業界イニシアチブです。WBEM の成果として、多様多様なソースから管理データの収集、関連付け、および統合するテクノロジが開発され、ユーザーはエンタープライズ ネットワーク環境の全体像をさまざまな視点で正確に把握できるようになりました。WBEM イニシアチブが解決を目指すのは、エンタープライズ ネットワークでのエンド ツー エンド管理および診断用データの収集に関する問題の解決です。大規模企業の場合、ネットワークは下図に示すように、製造元の異なるハードウェア、さまざまなプロトコルとオペレーティング システム、多数の分散アプリケーションで構成され、その全体の掌握は大きな課題です。図 17: WBEM アーキテクチャの例一般に、エンタープライズ環境では用途によって異なるプロトコルとインターフェイスを使用しています。たとえば、ネットワーク管理には SNMP (Simple Network Management Protocol) を利用し、デスクトップ システム管理には DMI (Desktop Management Interface) を利用する、といった具合です。そこでエンタープライズ ネットワーク管理の対策として、WBEM では、共通のモデルに準拠し、相互に連携しながら管理情報の収集に当たるツールの開発を提唱しました。共通化されたモデルとデータ ソースを必要に応じて拡張することで、既存のネットワーク コンポーネント、ツール、およびプロトコルとの連携が可能となります。図 18: WBEM 標準ベースのエンタープライズネットワーク管理向けイニシアチブつまり、WBEM はブラウザをベースをせず、また、ユーザー インターフェイス (UI) ツール、データ リポジトリ、ネットワーク管理プロトコル、コンポーネント モデル、レジストリ、ディレクトリ、ファイル システム、そのいずれに取って代わるものでもありません。 WBEM は、あくまでも規格であり、エンタープライズ ネットワークの管理標準の集まりです。WBEM の管理標準は次のことを定めたものです。•管理対象オブジェクトに関する情報へのアクセスに必要な構造と表記規則の定義。•情報の集中管理のサポート。さまざまなクライアントや管理ツールによるデータの提供、検索、解析をサポートします。•ネットワークのあらゆる場所から管理対象オブジェクトへのアクセス制御のサポート。アクセス権があれば任意の場所からオブジェクトの解析と操作が可能です。WBEM の沿革WBEM は、Microsoft、コンパック、BMC、シスコ、Intel を代表とする企業群によって 1996 年に構想化され、正式に提案されました。WBEM の基本構想はオープンなデータ管理環境の定義にあります。つまり、ネットワークを構成する管理システムとアプリケーションが、被管理デバイス上にある任意の管理エージェントを使用して、また可能な限り多くの既存テクノロジと規格を利用して、相互アクセス、制御、および情報共有を行うオープンな環境の定義にあります。この構想は多くの点で、近年の大きな技術的ブレークスルー である World Wide Web の成果を反映しています。なぜならインターネットは、史上初めて、通信相手のコンポーネントが置かれた環境に対する知識を必要とせずに、ネットワーク上のデバイスがデータの提供者にも利用者にもなれる環境だからです。このような WWW 技術との構想的類似性を受け、将来的に、従来型の管理ツールに Web ベース テクノロジを加えてオープンな管理環境の構築を図るために、イニシアチブは WBEM (Web-based Enterprise Management) と命名されました。イニシアチブ創設以来の参加企業は、DMTF (Desktop Management Task Force) という組織を結成し、共同で環境に依存しない WBEM 仕様のプロトタイプを開発しました。この仕様には、SNMP や DMI などの標準に基づき、任意の管理対象の記述方法とそのアクセス方法が定義されました。 この仕様の中核コンポーネントはデータ記述メカニズムで、これが後に CIM (Common Information Model) という名称で DMTF 標準になりました。CIM 仕様は元々 HMMS (HyperMedia Management Schema) プロジェクトとして知られ、データ プロバイダやほかの管理モデルからの情報の収集と転送に使用するモデリング言語、名前付け、およびマッピング技術を規定したものです。実装モデルの記述と情報のフレームワークは、CIM スキーマに定義します。具体的には、プロパティとアソシエーションを備えたクラスの集まりを定義し、管理する環境についての情報を整理します。DMTF では CIM 仕様と CIM スキーマの両方を管轄下に置き、ネットワーク管理データのアクセスおよび共有に関する業界標準と位置付けています。Windows 環境に実装された CIM コンポーネントの詳細については、後述の「WMI アーキテクチャ」を参照してください。1996 年から 1998 年にかけて、Microsoft は Windows をベースとした WBEM テクノロジの実装コンポーネントの開発に取り組みました。具体的には、WBEM SDK (ソフトウェア開発キット)、CIM コンポーネント、および CIM 対応データ プロバイダ テクノロジを開発しました。1998 年 6 月、DMTF は、創設企業からの WBEM イニシアチブの移管を受けたことを公表しました。このため、現在の WBEM イニシアチブ活動の中心は DMTF に移り、この組織は WBEM 互換テクノロジと標準の開発を進め、業界への普及を図る総合組織となっています。ただし、Microsoft Windows Management Instrumentation SDK (旧称 WBEM SDK) など WBEM 準拠の具体的な実装は、各ベンダの責任で行います。DMTF は、WBEM イニシアチブを引き受ける際に、WBEM 参照例として最新の WBEM テクノロジ (Microsoft の CIM 実装など) を使用することに合意しました。さらに、環境の中立性という当初の WBEM の理念を遵守するために、いかなる要件においても、プログラミング言語を特定の言語に限定するなどの実装の依存性をベンダに課さないことにも合意しました。WBEM の標準コンポーネント現在、WBEM は次の 2 つで構成されていますが、将来的には、ほかの標準 (XML によるプラットフォームに依存しない CIM オブジェクトの共有など) によって拡充されていく見通しです。•CIM 仕様 - WBEM の実装要件を定義します。•CIM スキーマ - データ リポジトリの内容を記述します。本来 WBEM は、CIM (Common Information Model) の実装を提案するためのイニシアチブです。CIM とは、管理対象オブジェクトのオブジェクト指向スキーマのことです。また、管理対象オブジェクトとはシステム リソースのオブジェクト表現、スキーマとは管理データを記述する共通のメカニズムのことです。WBEM はこれらを利用して、データの表現形式を規定する情報の標準と、コンポーネント間の相互作用を規定するプロセスの標準を定義するフレームワークです。CIM スキーマは、すべての管理ドメインに適用する単一のコア モデルと、特定の種類の管理ドメイン (システム、ネットワーク、データベース、アプリケーション、デバイス) に属する情報を記述するための複数の共通モデルで構成されます。スキーマは拡張可能です。共通スキーマで表現できない、特定のテクノロジ (オペレーティング システムなど) に固有の情報を表現したい場合に、拡張スキーマを定義します。Microsoft の WBEM 実装 - WMI Microsoft の WMI (Windows Management Instrumentation) は WBEM の実装形態の 1 つで、DMTF が採用した CIM に基づいてシステムおよびアプリケーションの統一管理をサポートします。これは Microsoft Windows 管理サービスの主要コンポーネントです。Windows 管理サービスには、WMI のほかに、Active Directory のロケーションとポリシーに関するサービス、Microsoft 管理コンソール (MMC) の表示系を司るサービス、WSH (Windows Scripting Host) による自動化機能が実装されています。WMI は Microsoft の管理インフラストラクチャの中核コンポーネントとして、Windows NT エンタープライズ ネットワークを構成する管理コンポーネントの保守作業と管理コストを軽減します。WMI には次の特長があります。•Windows 98 と Windows&#174 2000 オペレーティング システムの操作、構成、ステータス管理に、多機能で一貫性のあるモデルを提供します。WMI のダウンロード可能コア コンポーネントには、Windows NT 4.0 SP 4 と Windows 95 に対応したものもあります。•COM API によって、すべての管理情報への共通のアクセスを提供します。•ほかの Windows 2000 管理サービスと相互運用性があり、サードパーティ ベンダによる統合管理アプリケーションの開発を容易にします。•柔軟なアーキテクチャを提供しています。新規にコード モジュール (WMI プロバイダ) を記述することによって、ベンダは独自のデバイス、アプリケーション、拡張機能に対応するように情報モデルを拡張することができます。•管理情報の変化を認識、収集し、ほかの管理情報と比較、関連付けして、ほかのローカルまたはリモートの管理アプリケーションに転送できるイベント アーキテクチャを備えています。•情報モデルの詳細なクエリを可能にする多機能クエリ言語を提供しています。•スクリプトを記述できる API を採用し、管理アプリケーションの開発者が Visual Basic または WSH (Windows Scripting Host) を使用できるようになっています。たとえば、ローカルとリモートでのイベント管理機能と情報モデルのクエリを組み合わせれば、複雑な管理問題のソリューションを作成可能です。こうしたソリューションは Visual Basic または WSH で簡単にスクリプト化すれば、要求頻度の多い付加機能として Windows NT 管理に実装することができます。以降のセクションでは、Microsoft の WBEM 実装についてもう少し詳しく説明していきます。WMI アーキテクチャWBEM は、管理データの収集および配布に関し、3 層アプローチを採用しています。3 層とは、オブジェクト定義を格納する標準メカニズム (CIM 準拠のオブジェクト リポジトリ)、管理データの取得と配布のための標準プロトコル (COM/DCOM、ほかのプロトコルも使用可能)、および WMI プロバイダとして機能する Win32 ダイナミックリンク ライブラリ (DLL) です。WMI プロバイダは CIM スキーマに管理対象のデータを提供します。図 19: WMI のアーキテクチャWMI 機能を提供する実行プロセスは WinMgmt.exe です。この実行プログラムは、CIM オブジェクト リポジトリ、CIM オブジェクト マネージャ、API と連携して WMI 機能を実現します。CIM オブジェクトマネージャCIM オブジェクト マネージャは、Microsoft の WBEM 実装テクノロジの主要コンポーネントです。WBEM の最大の目標はデータの統一表現ですが、オブジェクト マネージャではデータをオブジェクト指向方式でカプセル化し、CIM オブジェクト リポジトリに格納します。CIM オブジェクト マネージャは、リポジトリに格納されている管理対象オブジェクトの収集および操作のポイントを提供し、情報の収集と操作を容易にします。ただし、CIM オブジェクト マネージャは管理情報に直接アクセスすることはありません。WMI プロバイダはリソース (管理対象オブジェクト) から情報を収集し、WMI API を通じて管理アプリケーションで利用できるようにします。つまり、WMI 内で CIM 機能を提供するのは、CIM オブジェクト マネージャです。WMI プロバイダWMI プロバイダは、CIM オブジェクト マネージャと 管理対象オブジェクトの間の中間プログラムとして機能します。CIM オブジェクト マネージャは、管理アプリケーションから CIM リポジトリにない情報、またはサポートされていないイベントの通知に対する要求を受け取ると、その要求をプロバイダに転送します。その結果、プロバイダから要求された情報またはイベントが供給されます。Microsoft WMI SDK には次のプロバイダが含まれています。•レジストリ プロバイダ•Windows NT イベント ログ プロバイダ•Win32 プロバイダ•SNMP プロバイダ•WDM プロバイダサードパーティ ベンダは、SDK を使用して、自社製品環境に固有の管理対象オブジェクトと対話するカスタム プロバイダを作成できます。Microsoft WMI テクノロジは、SNMP、DMI、CMI などの既存の管理標準の代替技術でも、NDS などの他社プラットフォームやプラットフォーム固有のフレームワークを排除する技術でもありません。実際 WMI は、どのようなソースからでもデータ アクセスが可能な統合ポイントとして働き、他社テクノロジを補完します。この統合ポイントによって、管理エンティティで使用されている機器特有の API や標準に依存せずに、管理アプリケーションが利用できるようになります。これによって、システム管理者は、ローカル レベルで、または全社レベルで複数のソースからのデータやイベントを収集し、相互に関連付けることができます。WMI セキュリティWMI は、Windows と Windows NT プラットフォーム専用の限定的なセキュリティをサポートします。WMI セキュリティは、ローカル マシンとリモート アクセスの両方についてユーザーのログオン情報を認証します。認証されたユーザーは、CIM スキーマ全体に対し、そのユーザーにふさわしいアクセス権を与えられます。現在の WMI リリースでは、個々のクラス、インスタンス、および名前空間などのシステム リソースに対するセキュリティはまだ提供されていません。ただし、ユーザーのアクセス権を読み取り操作に限定するなど、スキーマ操作に関するグローバルなアクセス制御は提供しています。WMI には、ユーザー アクセス権を設定するためのシステム管理者用ユーザー マネージャ アプリケーションが組み込まれています。このツールは、Windows NT オペレーティング システムに付属のユーザー マネージャ アプリケーションに似ています。セキュリティ チェックが行われるのは、ユーザーが WinMgmt にログオンしたときだけです。このため、ユーザーによる WinMgmt 接続中に行われたアクセス権の変更は、ユーザーが次回ログオンするまで有効になりません。ユーザーのアクセス権を無効にした場合も、これと同様です。セキュリティの実装に関する詳細については、WMI SDK を参照してください。イベント処理イベント通知は WMI の主要機能の 1 つで、これを使用すると、コンポーネントがハードウェアおよびソフトウェアに関するイベントやエラーを検出できるようになります。通知されたイベントが WMI アーキテクチャを通じて該当するコンポーネントに渡され、そこで必要な対応措置が実行されます。WMI 内では、イベントとは外部で発生した特定の (または事前定義された) 事象 (外因性イベント)、または CIM リポジトリの変更事象 (内因性イベント) のどちらかを意味します。イベントが発生すると、イベント プロバイダが CIM オブジェクト マネージャに通知し、CIM オブジェクト マネージャが、この通知をイベント コンシューマと呼ばれる 1 つ以上の登録済みの受信先に配信します。イベント コンシューマが受信する通知の種類は CIM オブジェクト マネージャに登録されています。また、イベント プロバイダには通知対象のイベントの種類が登録されています。イベント コンシューマがイベント プロバイダとは独立して動作できるようにするため、CIM オブジェクト マネージャは両者を仲介し、登録済みコンシューマをそのコンシューマに対応するプロバイダと照合し、該当するイベントがあれば、そのコンシューマに転送します。イベント コンシューマは受け取る通知を登録するだけで、イベントと通知が送られてくる方法には関与していません。通知の登録にはフィルタを指定します。フィルタは WQL (WMI クエリ言語) で記述されています。ここには、コンシューマがイベント通知を受信するための条件が列挙されています。WMI クエリ言語WMI クエリ言語 (WQL : WMI Query Language) は SQL 言語から派生した言語で、SQL にイベント通知などの WBEM 互換機能を追加したものです。コンシューマは、イベント通知を登録するとき、イベントの種類と配信条件をクエリに定義します。WQL を使用すると、エンタープライズ ネットワーク内の特定のコンポーネントに関するイベント通知フィルタを作成できます。WQL は WMI SDK 内に定義されています。WBEM 互換スクリプトWMI のスクリプト インターフェイスを使用すると、CIM オブジェクト マネージャと通信できるスクリプトと Visual Basic アプリケーションを作成できます。WMI スクリプトは次の各言語に対応しています。•Microsoft® Visual Basic®•Visual Basic for Applications•Visual Basic Scripting Edition•Microsoft® JScript®•Perlスクリプト インターフェイスは、Visual Basic、Visual Basic for Applications、VBScript (Visual Basic Scripting Edition) などのスクリプト言語に対応する点で、CIM オブジェクト マネージャの COM インターフェイスとは異なります。各種スクリプト言語と、スクリプトによるバッチ プロセス、自動イベント処理などの能力は、長年にわたって活用されてきました。これに対して、Microsoft の WBEM 互換スクリプトには、ほかの言語にない次の利点があります。•データ駆動アプローチ、つまり CIM を使用します。CIM は異種の情報を 1 つのモデルで扱います。このため、CIM のスクリプト API は、アプリケーションを各種のデータ ソースの複雑性から切り離します。•システム、ネットワーク、およびアプリケーションの情報を広範にカバーします。Microsoft のスクリプト API は、Win32、SNMP、レジストリ、WDM、パフォーマンス モニタ、Windows NT イベント ログ、および ADSI プロバイダをサポートします。Intel、コンパック、ヒューレット パッカード、BMC ソフトウェア などのベンダからは、各社に固有のオブジェクトに対応したスクリプト機能が提供される予定です。Microsoft でも、Microsoft Systems Management Server 用の機能を開発中です。また、Microsoft ではほかのプロバイダも開発中です。•プロバイダの機能が簡単に拡張できます。ツール、サンプル、および拡張可能なプロバイダ アーキテクチャは、Microsoft WMI SDK に完全なかたちで定義されています。さらに、プロバイダ開発には業界全体からのサポートがあります。•新しいスクリプトが簡単に記述できます。Microsoft WBEM 互換 API は使い方が簡単です。スキーマは、スクリプトの適用範囲と改良に合わせて、容易に参照および拡張することができます。Microsoft では、Windows 2000 に適用するシステム管理スクリプトの完全セットを提供する予定です。これらのスクリプトは、コマンド ラインから実行して、ローカルおよびリモートのシステム管理機能を提供します。サポート対象は Windows 95、Windows 98、Windows NT 4.0、および Windows 2000 です。スクリプトには VBScript 版、Perl 版、および JScript 版が用意され、ネットワークに合わせて簡単に拡張またはカスタマイズできます。さらに、WSH オブジェクト モデルを機能拡張すれば、CIM スキーマとの相互作用が可能となります。次のセクションでは、WDM プロバイダを使用して、Microsoft WBEM 互換 WMI アーキテクチャがどのように機能するかについて説明します。WDM プロバイダMicrosoft は、カーネル コンポーネント計測用に WDM プロバイダを開発しました。WDM 計測コンポーネントは、WDM (Win32® Driver Model) アーキテクチャのコンポーネントですが、幅広いユーティリティが組み込まれているので、他種ドライバ (SCSI や NDIS など) と併用できます。WDM プロバイダはカーネル モード コンポーネントと通信して、WDM 対応ドライバへの WMI の実装を可能にするサービスを提供すると共に、WDM プロバイダへのインターフェイスとしても動作します。WMI は WDM プロバイダを使って情報の公開、デバイスの設定を行うと共に、デバイス ドライバからイベントを通知します。WMI の WDM 部分は次のデータを配布します。•公開されたデータ - データの標準セットは、Windows 2000 付属のポートとクラスのドライバに組み込まれます。•カスタム データ - OEM/IHV ドライバ拡張機能の形で提供されます。•セキュリティで保護されたデータ - 指定された用途に合わせて、Windows NT セキュリティ記述子のかたちで提供されます。•高コスト データ (オプション) - データ収集アクティビティによっては、ドライバのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことがあります。このようなデータ収集は、管理アプリケーションが特にデータ収集を要求する場合にのみ実行します。既定では、ドライバは高コスト データを収集しません。WMI CIM に準拠しているテクノロジを使用する管理アプリケーションがその高コストデータを必要とする場合、WMI はデータの収集を開始するようドライバに通知します。そして、そのデータを必要とする最後の WMI 対応アプリケーションが終了するときに、データ収集を中止するようドライバに通知します。 どのデータの収集が高コストにつくかを決定するのは WMI ではなく、ドライバの作成者です。このように、収集コストが高いデータを識別するメカニズムは、非常に簡単です。•イベント通知 - イベント通知は WMI の主要機能の 1 つで、ドライバはこれを使ってハードウェア/ソフトウェアに関するイベントやエラーを検出できます。ハードウェア イベント通知は、前の説明のように、イベント フィルタと CIM オブジェクト マネージャによって処理されます。また、WMI は管理アプリケーションにデバイスの構成を許可します。管理アプリケーションは、ドライバで発生したイベント、または自らが収集したデータのせいで、デバイスを構成し直さなければならないことがあります。下図は、WMI アーキテクチャのプロセス フローにおける WDM プロバイダとカーネル モード計測機能の概要を示したものです。図 20: WDM プロバイダとカーネルモード計測機能ページのトップへ推奨トレーニング コースこのガイドで説明したタスクを実行するために最低限必要な予備知識については、以下に示す Windows 2000 用トレーニング リソースを参照してください。これらのコースの詳細情報は、http://www.microsoft.com/learning/default.mspx (英語) および http://www.microsoft.com/japan/learning/training/msulist.mspx に記載されています。コース名1267 : Planning and Implementing Active Directory (英語コース)1556 : Administering Microsoft Windows 2000 (英語コース)1557 : Installing and Configuring Microsoft Windows 2000 (英語コース)1558 : Advanced Administration for Microsoft Windows 2000 (英語コース)1561 : Microsoft Windows 2000 ディレクトリ サービス2151 : Windows 2000 ネットワーク エッセンシャル2152 : Microsoft Windows 2000 インプリメンテーション2153 : Microsoft Windows2000 ネットワークインプリメンテーション2154 : Microsoft Windows 2000 ディレクトリーサービスインプレメンテーション謝辞この文書の内容は、Accenture、Avanade、Microsoft Consulting Services、Hewlett-Packard Company、Lucent Technologies/NetworkCare Professional Services、および Compaq Global Services の IT 分野におけるさまざまな実装の経験に基づいています。この文書に資料を提供していただいた各団体の寛大な支援に対し、心から感謝いたします。この文書に記載されている情報は、発行時点で議論されている問題点に関する Microsoft Corporation の最新の見解を示しています。Microsoft は変化する市場状況に対処しなければならないため、本書の内容を Microsoft の確約事項として解釈してはならず、Microsoft は発行日以降に提示された情報の精度についてはいかなるものであれ保証致しません。この文書は、情報の通知のみを目的としており、Microsoft は本書に記載されている情報について明示的にも暗黙的にも一切の保証を致しません。適用し得るすべての著作権法を順守する責任はユーザーにあります。本書中のいかなる部分も、Microsoft の書面による許可なしには、いかなる目的のためであれ、いかなる形態、手段 (電子的、機械的、コピー機の使用、記録など) によっても複製、検索システムへの格納、または伝送してはなりません。この文書の内容に関する特許、特許出願、商標、著作権、およびその他の知的財産は、Microsoft が所有します。Microsoft との書面によるライセンス契約に明記されていない限り、本書の提供が、以上の特許、商標、著作権、あるいはその他の知的財産権の利用を認めるものではありません。この文書で例として挙げられている企業、その他の組織、製品、職業、イベントは、仮想のものです。それらが、いずれかの実際の企業、組織、製品、人物、またはイベントを指していることはなく、そのように解釈されるべきではありません。© 2001 Microsoft Corporation.All rights reserved.Microsoft、 BackOffice、 MS-DOS、 Outlook、 PivotTable、 PowerPoint、 Microsoft Press、 Visual Basic、 Windows、 Windows NT、 および Office ロゴは米国およびその他の国における米国 Microsoft Corporation の登録商標または商標です。この文書に登場する実在の企業名や製品名は、各所有者の商標である場合があります。ページのトップへ  印刷用ページを表示 メールで紹介 お気に入りに追加

【 83】 @IT:意外と知らない構成管理の正体(1)

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[引用サイト]  http://www.atmarkit.co.jp/farc/rensai/config01/config01.html

短期連載(要求仕様のボトルネックを探る)では、ITプロジェクトにおける“要求”というものにフォーカスし、高品質な要求開発と、その要求を管理することについてお話ししました。今回の連載では、構成管理(SCM:Software
読者の中には、構成管理といわれると「ソースコードのバージョン管理のことでしょ」ということで、主にライブラリアンと開発者が気にするものという認識の方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、本当にそうでしょうか?
数人のチームで、1カ月程度で作り上げるようなシステムや、オープンソースではうまくいっても、ある程度の規模の受託開発や、製品開発ではそれだけではうまくいかないことが多いのです。そこで今回は、まずは構成管理の概要をつかんでいただきたいと思います。
◆ いつ、誰が、何の目的で作成したか分からないコードが多い(特に、長期にわたって運用されているシステム)
◆ プロジェクトのたびに、ソースコード変更の手順を定めている。しかも、いつの間にか正しく運用されなくなる
ほかにもたくさんの課題があって、挙げていくとキリがないわけですが、そもそもプロジェクトとは、プロジェクトオーナーの要求を実現する複数のタスクの集合であり、タスクには必ず成果物が伴わなければならないものですから、プロジェクトオーナーから、「私のこの要求を実現するための成果物はどれですか?」といわれたときに、「これらの一式です」と直ちに提示できなければならないわけです。勘違いしないでいただきたいのですが、プロジェクトオーナーは神さまだといっているのではありません。
ただ、プロジェクトは、最後にきちんと納品さえすればよいというものではないのです。いつでも、指定された時点におけるプロジェクトの結果、状態を把握できなければいけないということなのです。そこには、タスクの依存関係、成果物の依存関係、それぞれに要したコスト、さらには検出された障害情報などが含まれていなければなりません。また、どのような経緯でそれらの成果物が出来上がったのかを示すことは、あなたがプロジェクトオーナーの立場なのか、開発者の立場なのかを問わず、あなたの身を守ることにもなります(これはもろ刃の剣ですから、あなたが不誠実、不正確な対応をしていたとすれば自爆することにもなります)。
このように考えると、ソースコードのバージョン管理だけではとてもこのような要望には応えられません。また、これらすべてを管理台帳のようなものとして作成し、人手で管理しなければならないとしたらどうでしょうか?
大変な労力を要しながら、ミスも続発するという事態になっても何ら不思議ではありません。
構成管理という考えは、すでに30年以上前から存在しているわけですが、残念ながら日本語の書籍は少ないようです。ITプロジェクトの現場への浸透度としては、最近になってCMMIへの取り組みの広がりとともに、言葉自体は浸透しているように思われます。しかし、実体としては、管理対象はソースコードのみというケースが多いようです。構成管理とは、具体的に何をどのように管理するものなのか、ということについては、次回以降で詳しく述べることにして、まずは構成管理を組織に導入するための手順を簡単にまとめておきたいと思います。
構成管理の必要性を理解し、導入しようという話は結構あります。だいたいはまずツールを購入します。ところが、買ったツールそのままでは自分たちのやりたいことは実現できず、ツールをカスタマイズする必要性に迫られます。カスタマイズできるのであればいいのですが、カスタマイズ作業があまりにも困難で、ツールの利用をあきらめるという場合が多々あります。結局はツールを購入する前の状態に逆戻りというわけです。これは本当に残念な話です。最初の一歩さえ間違えなければ、投資を無駄にせずに済んだのに、と思えてなりません。このような失敗を繰り返さないためにも、これから構成管理に取り組もうと思われている方は、以下の手順を頭に入れておいてください。
プロジェクトからのフィードバックを基に、プロセス、ツールを改善、カスタマイズする
先に挙げた失敗パターンは、(1)、(2)がない状態で、(3)と(4)を同時に行っているということになります。この場合、評価の基準がない状態ですから、ひたすら要求だけが膨張していき、収拾がつかなくなるのです。何だか失敗開発プロジェクトそのものを見ているような気がしませんか?
◆ スケジュール(構成管理プロセスを定義して、パイロットプロジェクトの評価を終えるまで)
構成管理プロセスまたは構成管理ガイドとして、大きくは以下の4つについてまとめます。これらの詳細については、回を改めて説明したいと思います。
ツールの評価は、構成管理プロセスを実現できるかどうかについて、以下のポイントに着目して行います。
パイロットプロジェクトとしては、新規開発プロジェクトと、保守・運用プロジェクトがターゲットとなり得ます。前者の方が導入への抵抗、障害は少ない傾向にありますが、あなたの組織が置かれている状況に合わせて、ふさわしいプロジェクトを選択すべきです。また、評価については構成管理プロセスのとおりにできたかできなかったか、もっと良い方法としては何が考えられるかについて、整理します。
ほかのプロジェクトへの適用に際しては、その目的と、パイロットプロジェクトの結果から期待できる効果などを伝え、構成管理の仕組みの提供とともに円滑な導入が行えるよう、支援の体制を用意することが重要です。これにはパイロットプロジェクトにかかわったメンバーが適任です。ここでも、適用して終わりではなく、常にその結果について、パイロットプロジェクト同様に整理します。
複数のプロジェクトに適用していくと、いろんな改善点が出てくることがありますが、それらの中には相反するものも当然ながら出てきます。ですから、すべての改善要望を取り込むのではなく、それぞれのメリット、デメリットを評価し、選別するか、特定のプロジェクトのタイプに分類できる場合には、構成管理プロセスにいくつかのバリエーションを持たせることを検討します。
さて、構成管理プロセスの詳細は後の回に譲るとして、今回の残りの部分でお伝えしておきたいことがあります。それは、構成管理を導入してもこんな状況は解決できないというものです。もちろん、構成管理では解決できないITプロジェクトの問題は山ほどあるわけですが、「構成管理を導入すれば、これは解決できる」という誤解を抱かれやすいケースがあるのです。それは、私が“インクリメンタルのドツボ”と呼んでいるものです。
インクリメンタル開発や、イテレーション開発という言葉はいまや誰にとっても珍しくもないと思います。また、プロジェクトオーナーに対してはウォーターフォールで開発しますといいつつ、実態としてはインクリメンタルな開発を行うというケースもあちこちで見受けられ、リスクの軽減という点からも、私としても大賛成な状況が増えつつあるようです。
しかし、あなたはこんな経験をしたことはないでしょうか? ここで、あなたはプログラマだと仮定します。あなたが参加することになった今回のプロジェクトは、Unified
Processを採用し、要求リスク、技術リスク、リリースリスクなどをインクリメンタルな開発を行うことによって軽減しながら開発していくとのことです。あなたは、初めてのインクリメンタルな開発に少なからず期待しています。いままでは、上流工程のしわ寄せがすべて自分たちに来ていたために毎日が残業の嵐でした。でも今回は違います。1カ月ずつ何かを作り上げていきます。そのたびにリスクが軽減され、スケジュールの精度も上がり、人間らしい生活を送りながらプロジェクトを進められるということなのです。
さて、1カ月を過ぎたころ、あなたはどのような状況に置かれているでしょうか? 予定では2回目のインクリメントに入っているはずです。あなたは、確かに2回目のインクリメントの開発をしているようです。しかし浮かない顔をしています。初めは調子が良かったのに、この1週間、深夜残業が続いているようです。なぜでしょう?
お分かりですね? そうです、1回目のインクリメントのデバッグと、2回目のインクリメントの追加機能開発に追われているのです。しかも、構成管理プロセスに従って、1回目のインクリメントのコードと、2回目のインクリメントのコードは別管理されています。あなたは、修正と追加のコードをそれぞれ別のファイルに行い、2回目のインクリメントのデイリービルド用にマージ作業まで行っています……。
つまり、プロジェクト計画に致命的な問題があるわけですが、構成管理の仕組みがあれば、別々のリビジョンとして並行開発のコード管理ができるので大丈夫(?)という、とんでもない問題点のすり替えが平気(かどうか分かりませんが)でまかり通っていたりするのです。
確かに、あるソフトウェア製品の奇数バージョンと偶数バージョンを並行開発するとか、簡易版とプロフェッショナル版を並行開発するとか、そのような場合には、構成管理をきちんと行うことが重要ですし、そうすることによって混乱を防ぎながら短期間で次々とリリースすることにもなるでしょう。この場合には、もちろん、担当者がそれぞれで別であれば、という条件付きなわけですが。
構成管理を正しく行えば、チーム内のコミュニケーションも円滑化されます。存在理由が不明な成果物もなくなります。プロジェクト資産の再利用にも役立つでしょう。しかし、安易なプロジェクト計画を許容するものではないということを忘れないでください。
メインフレームでの証券取引所データリアルタイム配信システム開発を経験後、数々のオブジェクト指向での企業情報システム開発を経て、ソフトウェア開発に関わる方々を少しでもハッピーにすべく、要求開発・管理、ソフトウェア開発プロセス構築に関する啓蒙、コンサルティングに従事。個人Webサイト(http://www.human-process.com/)からの情報発信
構成管理(SCM)とはいったい何か。最近よく聞く言葉だが、その実態については意外なほど知られていない
情報マネージャのための「今日のひと言」 - 2007/9/14『スピード』 仕事には、必ず納期があります。仕事は決められた“期限”に、求められる“品質”を……>>続きはクリック
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【 84】 @IT:意外と知らない構成管理の正体(2)

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[引用サイト]  http://www.atmarkit.co.jp/farc/rensai/config02/config02.html

第1回「ファイルバージョンの管理だけで十分ですか?」では、構成管理を検討、導入するための6つのステップについて簡単に見てみました。今回は、6つのステップの中でも、皆さんが最も気になっていると思われる、構成管理そのものについて書きます。構成管理の詳細は、各組織、プロジェクトごとに異なり、それらは構成管理プランや構成管理ガイドと呼ばれるドキュメントに定義されます。そこには、構成管理要素、変更管理、ステータス管理、監査などについて記述するということは、前回記したとおりです。
前回は、プロジェクトのいつの時点においても、要求/タスク/成果物の依存関係とともに、コスト、障害情報なども把握し、プロジェクトオーナーに提示できなければならないと書きました。ここでの“要求”という言葉は、“要求仕様“という狭義の意味ではなく、まさに、プロジェクトに対するあらゆる要求を意味しています。一例を挙げますと、「プロジェクトを××までに、成功裏に完了すること」というのもここでの要求に含まれます。従って、この要求を実現するためには、まずは“計画”というタスクを行うことになるでしょう。そして、計画タスクからは、目的、スケジュール、予算等々について定義、記述した成果物ができあがります。
ですから、構成要素には、皆さんが思われている以上に多くのものが含まれることになります。プロジェクトの規模によって、それぞれの構成要素の内容に違いはありますが(例えば、あるプロジェクトのプロジェクト計画は1ページの簡単なものかもしれませんが、別のプロジェクトでは50ページにも及ぶものかもしれません)、構成要素として検討しなければならないものにはそれほどのバリエーションはありません。
構成要素を漏れなく発見するためには、まずはプロジェクトのハイレベルなタスクを認識します。そして、そのハイレベルなタスクをどのように実行するのか、何を実行するのかを掘り下げます。そのようにして抽出されたタスクに対してまた、what、howを問いかけていくのです。こうすることによって、プロジェクトにおける構成要素を漏れなく見つけ出します。
ここまでを読まれて、あることにお気付きの方もかなりいるのではないかと思います。そうです。構成要素の発見とは、プロジェクトのWBS(Work Break down Structure)が正しく構築されている組織、プロジェクトにおいてはたやすいことなのです。
図1に、構成要素の発見の悪い例を示します。この例では、ハイレベルなタスクから、いきなり成果物を抽出しようとしている個所が見られます。もちろん、個人レベルではすべてが頭の中で展開できて、いきなり成果物を漏れなく発見することができるという人もいるかもしれません。しかし、それではいつまでたっても組織として定着することがありません。ですので、最低でももう1段はタスクをブレークダウンし、それに対する成果物という視点で発見することをお勧めします。
図2に、構成要素発見の改善例として、図1のやり方から、お勧めのやり方にしたものの例を示します。
私は、明らかに図2の方が漏れなく構成要素を発見していけそうな気がするのですが、皆さんはいかがでしょうか?
さて、このような形で構成要素を無事発見することができた後は、およそ以下の手順で進めます。
構成要素の格納ディレクトリ体系については、いままでいろんな組織、プロジェクトのものをみてきましたが、成果物の種類で分類している場合がほとんどのようです。私がお勧めする体系は、狭義の“要求”に関する、要求―タスク―成果物の関連を把握しやすくするために、要求ごとにディレクトリを作成し、そのサブディレクトリとして設計、実装、テストというディレクトリを作成するというものです。
ただし、この場合には、ソースコードが複数の“実装“ディレクトリに分散してしまい、コンパイルに大変な手間を要することになります。この点に関しては、ツールを利用することで解決可能なことも多いのですが、ここでは、特定のツールに頼らない方法として、“要求”ごとのディレクトリのサブディレクトリとして、設計、テストというディレクトリを作成します。設計ディレクトリの中には、シーケンス図に代表されるような、ある要求を実現するために利用するクラスやモジュールが特定できるような設計成果物を格納します。ソースコードは、開発環境、開発言語に適したディレクトリ構成に格納するようにします。こうすることで、開発作業者への作業負荷をできるだけ少なくし、かつ成果物間の関連も維持、管理しやすいようにするのです。
なお、狭義の要求―タスク(設計、実装、テスト)―成果物の連鎖にないものについては、極力WBSの構造に合わせたディレクトリ体系としています。理由は、上述と同じでタスクと成果物の関連を簡単に把握するためです。
権限設定、環境整備につきましては、比較的一般的な内容であることと、突っ込んだ内容になると、どうしても使用するツールなどに依存した内容となるため、ここでは言及しません。
さて、何とか構成要素が決まり、ディレクトリ体系も決まりました。ここからがやっと構成管理の実践ということになります。実践する内容とは、構成管理ガイドに記されているはずの、
これらを行ううえで、重要なものがあります。それは、ベースラインです。上記の3つの活動は、結局のところ構成要素に対する変更を管理、監視するというものです。そして、この活動を開始するきっかけが、ベースラインとなります。ベースラインとは、構成要素全体に対する、ある時点でのステークホルダー全員の合意といえます。変更管理、ステータス管理、監査とは、このベースラインに対する包括的な変更管理にほかなりません。ベースラインのない状態での変更管理はないということです。
図3は、プロジェクトライフサイクルにおけるベースラインと変更管理の在り方を示したものです。最初のベースラインを作るまでは、さまざまな手順によってさまざまな成果物が構成管理の仕組みの下に集められます。そして、ある時点、例えば要求定義が完了し、プロジェクトスケジュールに対する合意が得られた時点で、最初のベースラインとします。このベースラインに対するそれ以降に発生する追加、変更、削除は、すべて変更管理手順に従って行われます。
最後に、リリース(納品)のためのベースラインを作成し、運用フェイズに移行した後も、改修などを行う際には、変更管理手順に従ってベースラインを保守していくことになります。
実際には、変更管理手順が、合意を確立する手順として効果的なものであるために、最初のベースラインを作成する前の段階から、変更管理手順を適用するケースも多く見かけます。しかし、変更管理の本質とは、ある合意に対する変更を管理し、新しい合意を適切に確立するための手順であるということを常に認識しておくことは重要です。明確な目的の達成のために管理する、ということが重要なわけですが、得てして管理すること自体が目的だという錯覚に陥りがちだからです。正しい目的のない状態での管理、ルールは、非常に簡単に崩壊してしまうのです。
メインフレームでの証券取引所データリアルタイム配信システム開発を経験後、数々のオブジェクト指向での企業情報システム開発を経て、ソフトウェア開発に関わる方々を少しでもハッピーにすべく、要求開発・管理、ソフトウェア開発プロセス構築に関する啓蒙、コンサルティングに従事。個人Webサイト(http://www.human-process.com/)からの情報発信
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